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フィギュアスケート「宙返り=バックフリップ」が解禁に! 前代未聞ルール変更のウラ事情を国際スケート連盟技術委員が解説…導入は五輪後、影響は?
posted2024/06/27 17:00
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Getty Images
前代未聞のルール変更――。今年の国際スケート連盟総会(6月10−14日)をひとことで表すなら、この言葉がぴったりだろう。
すでに「宙返りの解禁」が話題になっているが、選手に関心が高かったのは「ジャンプやスピンの大改正」について。2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪のメダル争いにも影響する大改正が予想されていたが、五輪後の2026年7月から導入することが決定した。ルール改正の理由、そして導入が延期となった経緯は何か。国際スケート連盟(ISU)の技術委員である岡部由起子さんに、お話を伺った。
注目を浴びた「宙返りの解禁」
まず、この総会で採択され、今季(2024年7月以降)の採用が「決定」したものはいくつかある。最も注目を浴びたのは「宙返りの解禁」だ。
バックフリップは、これまでは危険性の高い技のため「違反要素」として禁止されてきた。もし演技中に跳べば「マイナス2点」となる。しかし昨季、アダム・シャオ・イム・ファ(フランス)が、ヨーロッパ選手権や世界選手権のフリースケーティングで、減点を承知の上で挑戦。ヨーロッパ選手権のインタビューではこう話していた。
「エキシビションではなく試合でやるのはエネルギーが必要なこと。でも観客の前で成し遂げたかった。このスポーツをプッシュするためにチャレンジしました。また見た目よりも危険ではありません」
これに対して、賛否両論が沸き起こった。たしかに、身体能力がある選手にとっては危険な技ではないのかも知れない。華やかな技として盛り上がるファンもいた。一方、周りの選手に対して危険ではないか、そして大きな穴が空くことで後に滑るスケーターにとって危険ではないか、という反対意見も出た。
「ISU(国際スケート連盟)としては、フィギュアスケートをより魅力的で、ファンを惹きつけるスポーツにしたいと考えています。シャオ・イム・ファ選手が跳んで、観客達が喜んでいた反応を見たことで『解禁しても良いのではないか』という意見が強くなり、解禁となりました」(岡部)
ただし、といって岡部さんは注意点を挙げる。
「あくまでも減点ではなくなる、ということです。フリースケーティングの中で1度のみ許可され、つなぎでも、コレオシークエンスでも、どこに入れても構いませんが、点数にはなりません。イナバウアーやバレエジャンプとは違って、コレオシークエンスの特徴にもなりません。1つのムーブメントとして、出来栄え(GOE)や演技構成点(PCS)で評価される可能性がある、ということです」
6分間練習で跳んでよいのか?
その上で、他の選手に対する危険性についても、こう考慮する。