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フィギュアスケート「宙返り=バックフリップ」が解禁に! 前代未聞ルール変更のウラ事情を国際スケート連盟技術委員が解説…導入は五輪後、影響は?
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byGetty Images
posted2024/06/27 17:00
2024年フィギュア世界選手権のフリーでバックフリップを披露し、大歓声を浴びたシャオ・イム・ファ。違反技だったバックフリップがルール改正により2026年7月より解禁になることが決まった
「現在のスピンは、レベルを獲得するために特徴を忙しくこなすだけになりがちなのが現状です。音楽に合った個性的で魅了的なスピンをプログラムに導入すべく、レベル獲得がなく、出来栄え(GOE)だけで評価するコレオスピンを考えました」
過去には、ルシンダ・ルー(スイス)のように個性的なポジションで高速回転をするスピンの名手がいた。またゆったりとした音楽に乗せて、美しいキャメルスピンで伸びやかに回転するような、音楽性の高いスピンもあった。
「3回転のみエッジに乗って回れば良いので、連続バタフライからエントリーするなどダイナミックな技も可能ですし、音楽に合った素敵なスピンも出来ます。可能性が無限に広がり、斬新なスピンが期待できます」
コレオリフトはペアの魅力を広げる技に
またペアのコレオリフトについては、こう話す。
「コレオリフトは、男性の腕がまっすぐになる所まで一度上がれば、あとは何をやっても良いというリフトです。音楽にあわせて、アクロバティックなものから、ゆったりしたものまで、ペアの魅力を広げる技になるでしょう」
総会の1日目にはワークショップが行われ、各国のスケート連盟代表に趣旨を説明。その後、各提案への投票が行われた。投票は3日目に行われ、参加した57カ国の連盟が、各国1票を投じるスタイルだ。まずジャンプ類の投票が行われ、27対26で賛成が上回り、可決。ところが、疑義が上がった。
「1国1票なので57票あるはずが、合計で53票しかありませんでした。そのため『投票しなかった国があるのではないか』という声が上がりました。27対26は僅差のため採決が変わる可能性があります。もう一度投票すべきだ、という意見も出ました」
今回は、タッチパネル式の電子投票の機器が故障したため、緑(賛成)と赤(反対)と白(棄権)のカードを掲げて、目でカウントするというアナログ方式で採決した。そのため、投票しなかった国があるのか、数え間違いなのかどうかも分からず、総会は混乱した。
もちろん疑義が出たのは、今回のルール改正案について、各国の賛否がせめぎ合っていたためだ。ジャンプが得意な選手を擁する国にとっては、ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪まではジャンプ要素7つのままが有利である。表現力に秀でている選手や、スピンを得意とする選手のいる国であれば、ジャンプ数が減り、コレオスピンを導入するほうに勝算がある。
混乱のなか、各国から意見が出され、話し合いが行われた。4日目に行われた投票で、残っていた各案の投票も継続された。『ペアのコレオリフトについては、選手への負担が大きいため今季の導入は見送り』となったところで技術委員会は、このような再提案をした。
アスリートファーストの視点をふまえた提案
「『ジャンプ要素は6つに削減、コレオスピンとコレオペアスピンを導入、コレオリフトは2026/27シーズンに導入』というパッケージについて、2026/27シーズンから導入する」
なぜこのようなパッケージ案を再提案することになったのか。