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「自分なんて全然ちっぽけ」井上尚弥がNY熱烈歓迎でも“謙虚なチャンピオン”を崩さなかった理由「授賞式翌日はドジャース大谷観戦で…」 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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photograph byJIJI PRESS

posted2024/06/14 17:00

「自分なんて全然ちっぽけ」井上尚弥がNY熱烈歓迎でも“謙虚なチャンピオン”を崩さなかった理由「授賞式翌日はドジャース大谷観戦で…」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

全米ボクシング記者協会(BWAA)の表彰式&夕食会に出席した井上尚弥。米リングマガジンのダグラス・フィッシャー編集長(左)からベルト2本を受け取り、BWAAジョセフ・サントリキート会長(右)から「シュガー・レイ・ロビンソン賞」の盾を受け取った

「今日、この場に立たせて頂くにあたり、BWAAのサントリキート会長をはじめ、投票していただいたBWAA会員の皆さま、トップランクのボブ・アラムCEO、帝拳プロモーションの本田(明彦)会長、大橋プロモーションの大橋(秀行)会長に改めて感謝を申し上げます。2023年は自分にとって最も大きなチャレンジの年でした。スーパーバンタム級に上げ、いきなり2団体統一チャンピオンのスティーブン・フルトンとのタイトルマッチ、そして12月の2団体統一王者であるマーロン・タパレスと、どちらも簡単な試合ではなかったですが、無事に勝つことができました。そうした結果を今回皆さんに評価して頂き、すごく嬉しく思います。この先の自分のキャリアも楽しみにしていてください。今日はありがとうございました。Thank you very much」

 そう力強く述べると、約300人の出席者から大きな拍手を浴びた。決して長くはなかったが、日米両方のファンへの感謝をストレートに述べたいいメッセージだった。

 後にここでの二刀流(=二カ国後)スピーチについて問うと、井上は「やっぱりあの文を全部、覚えるっていうのはちょっと厳しいなと思って。こっち来てから(練習しました)」と悪戯っぽく笑った。攻める時は攻め、引く時は引く。ここでも井上らしい適応能力が発揮されたと見るべきなのだろう。

ヤンキースタジアムでドジャース大谷を観戦

 こうしてキャリア最大級の難関(?)も難なく突破したモンスターは、その後もニューヨーク滞在を存分に楽しんだようだった。

 7日はヤンキースタジアムでヤンキース対ドジャースというMLBの黄金カードを観戦。ヤンキース史上初の日本人小規模オーナーである南壮一郎氏の計らいで、大橋会長と共にオーナーズスイートにも招待された。ゲーム中盤にはトップランクが手配した席に移動し、井上はアメリカンサイズのポップコーンを片手に大谷翔平、山本由伸が活躍するゲームに見入った。

 8日はマディソン・スクウェア・ガーデン(MSG)シアターで挙行されたボクシング興行に顔を出し、フェザー級の無敗プロスペクト、ブルース・ケアリントンの試合を観戦した(事前に井上に対して挑発的なことも述べていたケアリントンだが、8回TKO勝利を飾ったこの日の出来は残念ながらもう一つに見えた)。

 MSGシアターでの時間の合間にはESPNが作成しているドキュメンタリーのインタビューも収録された(筆者がインタビュアーを担当したので出来上がりを楽しみにしておいて頂きたい)。その際にはクルーから「ニューヨークのピザは美味しかった?」と問われ、モンスターが「イエス!」と嬉しそうに答えていた姿も印象に残る。

 このように各地を回る中で、どこに行っても熱列な歓迎を受けたことは言うまでもない。前述通り、多くの選手、関係者、ファンが集まったBWAAのパーティ会場での人気はダントツ。MSGシアターでも会場入り直後から周囲にファンが群がり、会場に光を灯し、超満員の興行に貴重なアクセントを添えてくれた。

【次ページ】 「全然ちっぽけなもんですよ」

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