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「長谷部誠の半生は日本サッカーの財産」“生意気な後輩”鎌田大地に慕われ、岡田武史から「誠実」と評され…長年追う記者が確信する理由
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byItaru Chiba
posted2024/06/09 17:03
長谷部誠が日本代表とドイツの地でプレーヤーとして残した輝かしい実績。ここからは指導者としてもまた積み上げていくはず
日本代表選手はどんな想いや葛藤を抱えながら日々を過ごしているのか。ヨーロッパでの戦いを通して得られるやりがいや苦労はどんなものなのか。シーズン中、選手はどのようなバイオリズムで戦っているのか。異国でタイトルを取ることの意義、CLの重みとは、どのようなものか……。
あの1年を筆頭に長谷部には何百時間も話を聞かせてもらい、心の揺れ、人知れぬ苦労などを教えてもらった。落胆や怒りに触れさせてもらう機会もあった。
現在も多くのアスリートの取材をさせてもらっているが、長谷部と積み重ねた時間が、取材を進めていく上での重要な指針となっている。
様々な苦労、試合の意味を伝えきれただろうか
ただ、彼が様々な話をしてくれた労力、時間、想いに見合うだけの報道が自分自身に出来ていただろうか。
答えは、ノーだ。
一言でいえば、それに応えるだけの能力が駆け出しのライターだった筆者にはなかった。
例えば、ボルフスブルク時代の移籍を巡る騒動の詳細や背景。あるいは2011年のアジアカップ準々決勝、カタールとの死闘を制した直後に「今日、じいちゃんの命日だったんだ……」と教えられたこと。長谷部を「誠」と名付け、プロ入りの後押しをした祖父・松太郎さんの命日に、数的不利のなかで大逆転勝利を飾れた意味を上手く伝えられなかった。
ほかにも、後悔と無力さを覚えたことは山のようにある。与えられたものに釣り合うようなものは少しも返せていない。それらは“借金”のようだと筆者は考えている。
だからこそ――膨大な資料と記録を振り返りながら、ドイツと日本代表での長谷部誠の偉大なる足跡を改めて記した。その半生は日本サッカー界にとって、大きな意味を持つ。そう信じて。
<各回からつづく>