酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
既存の野球界に波紋、軋轢があっても…なぜ43歳元甲子園球児は“高3夏の夢を逃した”選手対象に「北海道とエスコンでキャンプ開催」するか
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2024/05/31 11:05
広まりつつある“高校野球のリーグ戦”文化。この輪を広げている阪長友仁氏の考えにある哲学とは
「定期的にセミナーを行って、そこに高校野球の監督が集まってきていたのですが、こうした指導者が選手たちと一緒に学びながら成長していくためには、リーグ戦をやるのがいいんじゃないかとなったんです。
身近な大阪の高校指導者の先生方に話をして、秋季大会が終わった10月くらいから始めることになりました。リーグ戦はトーナメント戦と違って一戦必勝ではありません。もちろん、勝利を目指すのは変わりませんが、負けても次の試合がある。だから、いつもと違った思い切った起用ができるし、選手たちにも思い切ったチャレンジをさせることもできます。
アメリカの『Pitch Smart』に準じた球数制限のルールを設けたり、低反発バットや木製バットを使ったり、これまでにないルールを導入したらお互いに成長できるんじゃないか、とスタートしたんです」
ただリーグ戦をするだけではなくて
ドミニカ共和国の野球を視察した指導者が中心となって、大阪府で始まったリーグ戦は、その後、阪長氏の母校がある新潟県と、長野県に広がった。
「ただリーグ戦をするだけではなくて、これを通して成長するにはどんな工夫が必要か、どんな仕掛けがあればみんなが毎年アップデートできるか、選手や指導者の成長につながるか、をずっと考えていました。
ただ参加校が拡がると、リーグ戦をするのが目的のようになってしまう。みんながアップデートするためには、何かが必要だと思っていたのですが、その矢先にコロナ禍になったんです」
野球だけでなくすべての部活が停止になり、学校にも行けなくなる中、阪長氏はZoomによる「座学」を始めることにした。そしてその場に一般社団法人日本スポーツマンシップ協会の中村聡宏代表理事(立教大学スポーツウエルネス学部准教授)を講師として招聘した。
「僕自身が日本スポーツマンシップ協会認定のスポーツマンシップコーチ認定講習会を受講しました。そこで自分自身が野球を通じて目指していたのは、これなんじゃないか? と腑に落ちた。選手、指導者ともに理念として学ぶべきじゃないか、と思ったんです」
昨夏優勝校の慶応をはじめ、数多くの高校が
スポーツマンシップの基本は、チームメイト、相手選手、審判、スポーツそのものへのリスペクトである。両チームとも十二分に力を発揮したうえで、勝利を目指す。素晴らしいプレーをした選手には相手であっても拍手を送る。「勝利至上主義」とは似て非なる考え方であり、世界中のスポーツに関わる人たち、アスリートにとって「スタンダード」となっている。