酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「ナイター後、車で宿に戻るのは夜中2〜3時」筒香嘉智24歳がデバース、ポランコらとドミニカで…サポートした阪長友仁43歳が見たリアル
posted2024/05/31 11:04
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kou Hiroo
ドミニカ共和国での少年野球の指導は、阪長氏にとって衝撃だった。
「ドミニカ共和国にはMLB30球団すべてのアカデミーがあります。若い選手たちはそこのトライアウトに合格するために野球に励むんです。アカデミーは日本の高校生の年代です。各世代でどんなことをしているのか、それが知りたかった。彼らは最終的にはメジャーリーガーになりたい。指導者もみんなをメジャーリーガーにしたい。
そこから逆算して、技術やメンタルを学んでいくわけですが、子どもたちの指導者は『その根底に、もっと大事なものがある』というんです。それは『その選手が野球を好きになれるかどうか』ということです。
それがないと、いろんな技術を磨くこともできないし、激しい競争の中で最大限のものを出していくこともできない。だから、日本でいう小学生年代は”野球好き”になることに集中する。とにかくこのスポーツは楽しい、時間も忘れて出来ると小学生のうちに思わないと、その先の可能性がないという考えなんです」
野球という競技を好きになってもらう
だから、指導の考え方そのものが全く違っていた。
「日本の場合、指導者が子供たちに『こうするんだよ』『こうしなさい』と勝つための手段を手取り足取り教えますが、ドミニカ共和国はそうではない。彼らが好きで始めた野球を思いっきりプレーさせる。もちろん試合形式では勝利を目指しますが、勝っても負けても試合ができるリーグ戦が基本なので、結果よりも勝利を目指すその試合を楽しめたかどうかという方が大事になります。
全国大会もありませんし、小学生の試合で優勝したからと言ってメジャーリーガーになれるわけでもない。それよりも試合を通じて、野球という競技を好きになってもらうことを考えて指導に当たっています。子どもたちはもともと上手くなりたい、という気持ちを絶対に持っています。その気持ちを伸ばしてあげるわけです。
もちろん周りの大人が、何も言わずに見ているだけでは、子供たちは野球好きにはなりません。彼らが経験していく過程に色々なことをちりばめておくことで、野球が好きになるんですね」
ドジャースアカデミーの指導者と出会って…
阪長氏はドミニカ共和国にあるロサンゼルス・ドジャースのアカデミー指導者であるアントニオ・バウティスタ氏と出会い、自身の次なる使命を見つけていく。