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ダルビッシュ有が変化球をコーチから酷評された日…プロのまねをしていた少年が37歳で日米通算200勝を達成するまで「理想の投球はない」
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byNanae Suzuki
posted2024/05/22 17:00
現地時間5月19日に日米通算200勝を達成したダルビッシュ。七色の変化球を操る投球の原点には本気にさせられた小学生時代の出来事があった
こんな球投げたいというのが野球を続けている動機
「小さい頃からそうなので、そもそも成績を残すというところじゃなくて、どっちかと言うと、いろんな変化球、こんな球投げたいというのが、自分がずっとやっている動機なので、そういうところなのかなと思いますけど」
小学生時代に投げ始めたカーブを、当時のコーチに酷評されたのを機に、プロ野球選手らの変化球を「見よう見まね」で投げ続けた。当初は遊びの延長線上だったのが、次第に遊びの領域を超え、試合でも使えるようなレベルへと進化していった。
キンブレルのナックルカーブを数時間で習得
個人差があるとはいえ、通常、変化球の習得には一定の期間を要する。だが、ダルビッシュの場合、感覚がピタリとはまれば、すぐに実戦で使えるケースも少なくない。メジャー移籍後、ドジャース時代の同僚でもある前田健太のチェンジアップを参考にした際には、安定したレベルに届くまでには時間が必要だった。その一方で、カブス時代にはクローザーのクレイグ・キンブレル(現オリオールズ)から登板直前の練習で助言を受けたナックルカーブを、すぐに実戦で投じるなど、人並み外れた適応力で、幾多の変化球を習得してきた。
1シーズンごとに変化球をアップデート
昨年3月のWBCの際、侍ジャパンの宮崎合宿に参加した時には、日本では珍しいとされた真横へ滑るスイーパーを披露し、若い日本投手陣から注目を集めた。その一方で、今季の春季キャンプでは、自らの発想で時速140キロ前後の「速いスライダー」を磨き、時速145キロ前後の高速カットボールとの差別化にトライするなど、変化球の細分化をさらに進めた。
力だけでねじ伏せるのではなく、相手打者に対して、いかに満足なスイングをさせないか。
「米国ではデータがその年によって変わっていく。その年のトレンドがあったら、オフには野手がどうやったら長打を打てるか練習してくる。そしたら次の年、また変わる。そこに対応して球速を上げたり下げたり。毎年変わって来るから」