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〈5勝0敗、防御率1.08の衝撃〉カブス今永昇太30歳のフォーシームは「最強級の変化球」では…山本由伸の強みと一味違う「とんでもない緩急」 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byMichael Reaves/Getty Images,Nanae Suzuki

posted2024/05/13 17:00

〈5勝0敗、防御率1.08の衝撃〉カブス今永昇太30歳のフォーシームは「最強級の変化球」では…山本由伸の強みと一味違う「とんでもない緩急」<Number Web> photograph by Michael Reaves/Getty Images,Nanae Suzuki

メジャー序盤戦を素晴らしい成績で発進した今永昇太。そのピッチングは山本由伸のスタッツと比べると、どんな違う持ち味がある?

 山本由伸のフォーシームの最速は、5月1日のダイヤモンドバックス戦1回のクリスチャン・ウォーカーに投げた156.4km/hだが、260球のうち169球が153km/hから155km/hの間に収まっている。

 大谷翔平は2018年6月のロイヤルズ戦で先発して、いつもは160km/h近く出るフォーシームが150km/hそこそこしか出ず途中降板。秋にはトミー・ジョン手術となったが、フォーシームの球速が極端に変わるときは、肩肘に異常をきたしていることも多いのだ。

 しかし今永の速球は4月13日のマリナーズ戦の4回、ディラン・ムーアに投げた152.1km/hを最速として、最も遅い球は142km/h台と10km/h近い幅があるのだ。同じフォーシームなのに「緩急」がついていると言うか――。

 各打者との対戦を見ると、意図的にフォーシームの球速を変化させているのではないか、と思えるケースが散見される。

 例えば4月20日のマーリンズ戦の6回、ブライアン・デラクルーズとの対戦である。

 初球は143.4km/hのフォーシームだったが、ここから145.8km/h、146.0km/h、146.9km/h、149.0km/hと徐々に球速を上げて、最後は134.7km/hのスプリッターで三振に切って取っている。こうした例が、いくつか見られる。

分かっていても打てない「最強の変化球」か

 NPB時代の今永はフォーシームのほかに、チェンジアップやツーシームを投げるとされてきた。MLBの球種は「ホークアイ」のトラッキングシステムを基幹とする「スタットキャスト」が自動的に判断している。あるいは今永自身は「別の球種」だと思って投げている球が「フォーシーム」となっているケースもあるのではないか。

 ある意味で今永のフォーシームはわかっていても打てない「最強の変化球」なのかもしれない。

 NPB時代、今永は低めに制球力のある球を投げ込んで勝ってきた投手だが、MLBでは意識的に「高めのフォーシーム」を投げているようだ。

 日本の打者は、強振するだけでなく、走者を進めるために当てにいったり、球に逆らわず流したり、ゴロを転がしたり、様々な打撃を見せるが、MLBの打者は基本的に「振り回す」ことが多い。「フライボール革命」以後、その傾向が特に顕著だ。打ち上げようとする打者に有効とされる「高めのフォーシーム」を投げることで、有利なマウンドを築き上げているように思う。

 今永がDeNAに所属した時期に、アナリストから「今永はクローザーが試合を決める“ここぞ”というときに投げるような、厳しい球を投げることができる。先発投手としては珍しい」との話を聞いたことがあるが、そうしたメリハリのついた投球が有効に作用しているのではないか。

2人の捕手との相性も偏りがない

 では捕手との相性はどうか?

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