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日本メディアの“誘導”に乗らないルイス・ネリの冷静さ…世界的カメラマンは“悪童の実力”をどう見たのか?「それでも井上尚弥が圧倒的に有利」
text by
福田直樹Naoki Fukuda
photograph byNaoki Fukuda
posted2024/05/03 17:05
公開練習で自信に満ちた表情を見せるルイス・ネリ。5月6日、東京ドームで井上尚弥に挑む“悪童”の実力を福田直樹氏が分析する
ネリの「独特な遅さ」に井上が手を焼く可能性も?
井上は離れた位置からもステップインが効いた強力な右ストレートを打ち込めるし、接近すれば必殺の左ボディブローがある。ネリの唯一の敗戦であるブランドン・フィゲロア戦を参考にすると、このレバーブローが決め手になるケースも考えられる。井上はサウスポーの右リードに左フックを瞬時に被せるのがうまいので、ネリの中途半端なジャブに対して、それも有効に働くに違いない。
ネリは決して打たれ弱い選手ではないが、マーロン・タパレスやスティーブン・フルトン、ポール・バトラーほどディフェンシブにはなれないから、前半のうちに大きな動きがあり、そこで勝負が決まると読んでいる。
一方、井上サイドにとっての不安点をあえて探すなら、それは王者本人が話していたように、ネリとの“速度の差”になるかもしれない。今のネリにバンタム級時代の機敏さは感じられないが、すでに触れた通り、独特の回転力と周期を持っている。井上が自分のテンポとは異なる、遅れ気味のパンチに手を焼く可能性はわずかにある。ワイルドなコンビネーションの中に交ぜてくる、軌道の違う左ストレートも警戒すべき一発だ。
ただ、そうは言ってもネリはワンパンチKO型ではなく、相手に左を効かせてから畳み掛けるタイプなので、あらゆる状況を想定している王者陣営と打たれ強い井上が、その攻め口にハマるシーンは想像しにくい。
あともう一つ、当然ながら気になるのは、前科の多いネリのウェイト問題である。ネリがいくら落ち着いた表情でいても、完全には安心できない。これに関しては前日計量で秤に乗るまで油断できないが、今回は特別に用意された事前の計量で厳重にウェイトをチェックされているし、リミットをオーバーした際はTJ・ドヘニーという代役も控えている。ネリ陣営も何かあった時の代償の大きさは流石に分かっているはずなので「今度だけは大丈夫」と信じておきたい。