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「井上尚弥をリスペクトしている。だが…」ルイス・ネリは本当に“傲慢”なのか? メディア殺到の来日会見と公開練習で見えてきた“悪童の素顔”
posted2024/04/26 17:01
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Takuya Sugiyama
スーパーバンタム級4団体統一王者、井上尚弥(大橋)に挑むルイス・ネリ(メキシコ)の一挙手一投足に注目が集まっている。ネリは2017年に山中慎介からWBCバンタム級王座を奪った際にドーピング違反疑惑が発覚、さらに翌年の再戦で故意と思われる計量失格を犯した上で山中をKOし、日本ファンの憎悪をかき立てた。こうした過去がネリの発言や振る舞いへの注目を高めているのだ。4月21日に羽田空港で行われた即席記者会見、そして23日の公開練習の模様から“悪童”の素顔を探ってみた。
報道陣に驚くこともなく…大胆不敵なネリ語録
来日したネリをつかまえようと、多くのメディアが羽田空港に集結したのが21日のこと。アメリカでキャンプを張ったネリはロサンゼルス発の便で到着した。妻と3人の娘を加えたチームのメンバーは10人を超え、あとから来日するメンバーもいることから、かなり大所帯のチームである。
本人は入国手続きを済ませると、出迎えた報道陣に驚くこともなく、即席の会見スペースにスタスタと移動した。インタビューが始まると、日本のメディアは待ってましたとばかりに質問を浴びせる。普段の外国人選手来日とはかなり違うムードだ。
まずは3月6日、東京で開かれた井上との記者会見が話題に上った。そのときのネリは、歩み寄ってきた山中に謝罪するなど優等生的な態度に終始。「猫をかぶった」とも評されたその振る舞いについて指摘されると「周りのみなさんがリスペクトすべきだと教えてくれた。それで、あのような態度になった」と説明。「では、本当のネリは?」と畳みかけられ、「本当のネリ、という意味では、井上をリスペクトしている。だが恐れてはいない、KOする」と言い切った。
長旅の疲れを見せず、インタビューに応じる姿は堂々たるもの。日本ボクシングコミッションがネリのライセンス停止処分を解いたことに関する質問には、次のように答えた。
「井上は自分を売り出さないといけない。私は見せ場のある選手なので許された(ライセンス交付が許可された)のだと思う。すべての関係者が現実的な判断をしたのだと思う」
井上の東京ドーム興行を盛り上げる一番の相手は、日本でよく知られるこのオレ様以外にはいない、と言いたいのだろう。その知名度は自ら犯した失態に起因するのだから「お前が言うな」という話だが、日本における自身の商品価値をよく自覚していると感じさせるセリフだった。