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悪童・ネリの体重超過に「僕の心は崩壊していました」…山中慎介が初めて明かした“あの再戦前夜”の真実「悔しくなって、もうその繰り返しで」

posted2024/04/29 17:05

 
悪童・ネリの体重超過に「僕の心は崩壊していました」…山中慎介が初めて明かした“あの再戦前夜”の真実「悔しくなって、もうその繰り返しで」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

ルイス・ネリと2度拳を交えた“神の左”山中慎介。Number最新号に掲載された『山中慎介 悪童・ネリと闘った189日間。』で当時の思いを語っている

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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Takuya Sugiyama

5月6日、井上尚弥(31歳)の持つ4本のベルトを狙い、ルイス・ネリ(29歳)が6年ぶりに日本のリングに立つ。
なぜネリは日本のボクシングファンから嫌われるのか? 物議を醸すネリとの2試合を経験した山中慎介。これまで語ってこなかった想いを告白した「ナンバーノンフィクション」を執筆した二宮寿朗氏の取材後記を公開します。(全2回/ノンフィクションの抜粋記事も公開中)
【ノンフィクション記事全文は発売中のNumber1094・1095号、山中慎介「悪童・ネリと闘った189日間」に掲載されています】

 “悪童”と呼ばれる男が、再び日本にやってきた。

 5月6日、東京ドームで4団体統一世界スーパーバンタム級王者・井上尚弥に挑戦する29歳のメキシカン、ルイス・ネリである。

山中慎介は“まったく弱みを見せない人”だった

 かつて日本のボクシングファンすべてを敵に回したファイターだと言っていい。山中慎介との2度の戦いにおいて、ネリが4回TKO勝ちを収めた2017年8月の一戦は後日、ドーピング検査で禁止薬物ジルパテロールの陽性反応が出たことが発覚。翌年3月のリマッチでは前日計量で衝撃の2.3kgオーバーから体重超過で王座はく奪となり、JBC(日本ボクシングコミッション)から無期限の国内活動停止処分を受けた。しかし規定改定を受けての再申請によって処分が解除され、事前計量やドラッグテストなどを行なう条件で6年ぶりに日本で試合をすることが許された。

 あのとき山中は「自分が弱いから勝てなかった」と言い残し、あまりにアンフェアな敗北を受け入れた。こうして世界戦12度の防衛、30度のダウンを積み上げた“神の左”は、静かにリングを去った。

 日本チャンピオン時代から追いかけ、話を聞き、ずっと定点観測をしてきた山中慎介という人は、周囲にまったくと言っていいほど弱みを見せなかった。「言うとそのとおりになってしまうから」と本人から聞かされたことはあるが、周りを心配させたくないという面が強かったように感じる。ある試合では、随分と後になってから「実は減量中に風邪を引いていたんです」とコソッと教えてもらったこともある。

 ネリとの2試合についても、語られていないことがあるという思いはずっとあった。ひょっとしたら「コソッと」がまたあるかもしれないなとも考えていた。だが、それがないままに6年が過ぎようとしていた。ネリがやってくるこのタイミングしかないと思い、あらためて当時を振り返ってもらった。結果として、いくつか知らなかった事実を含めたノンフィクション記事「山中慎介 悪童・ネリと闘った189日間」をNumber最新号1094・1095号に掲載することができた。

「ずっと、ずっと泣いていた」あの再戦前夜の真実

 知らなかった事実の一つを、ここで紹介したい。

【次ページ】 「あのときの僕の心は正直言って崩壊していました」

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