甲子園の風BACK NUMBER
「安定した生活を捨てるなんて」と言われても…大阪桐蔭元主将“26歳で引退後”の今「全く戦力になれなかった」異動のち退職、起業したワケ
text by
間淳Jun Aida
photograph byGen Mizumoto
posted2024/04/15 17:04
現在は起業した大阪桐蔭高校の元主将・水本弦さん(左)と賛同する長井昭人氏
「リングマッチ」には専門知識のあるキャリアアドバイザーも在籍。目標に向かって努力を継続する力や課題を見つけて解決する力、協調性や自己犠牲など、野球で養った長所が生きる企業を求職者に紹介している。
企業側からの需要は営業や企画に関わる職種が多いという。水本さんは「営業は断られることが多いですし、企画は何度もやり直しが求められます。どちらも気持ちの強さや、失敗を成功に変える力が必要です。野球と共通していると思います」と説明する。「打率3割」、「防御率3点台」が一流と言われる野球は失敗を前提としたスポーツであり、忍耐や課題解決なくして結果は残せない。
人材育成のビジネススクールの夢も持っている
水本さんの考え方に賛同する企業は着実に増えている。
名古屋市で医療機器を販売する「CTM」も、その1つ。長井昭人社長自身が野球をしていたこともあり、野球に打ち込んできた人の長所を理解している。営業マンの大半は野球経験者で、2001年の創業から増収を続けているという。今後は「リングマッチ」と連携を深め、野球を引退した人たちが活躍できる場を積極的に増やしていくつもりだ。
プロ野球選手を断念した水本さんは、新たな夢を描いている。現在展開している人材紹介にとどまらず、企業が求める人材を育成するビジネススクールも視野に入れる。エンジニアやマーケティングといったスキルをビジネススクールで学び、野球を通して身に付けた長所と掛け合わせれば、第2の人生でも充実感を得られると考える。
社会人になって戦力になれない、となってほしくない
守備位置のコンバートで輝く選手がいるように、仕事にも適材適所がある。
「野球を一生懸命やってきた人が報われる仕組みをつくりたい気持ちが強いです。社会人になったら会社の戦力になれない、やりがいがないということになってほしくないですから」
かつては打力とキャプテンシーでチームを牽引した水本さんは今、野球経験者と企業のつなぎ役に徹している。
そんな水本さんがキャプテンシーや起業精神の土台を磨いた大阪桐蔭では、その当時から現在まで西谷浩一監督がチームを率いている。高校野球ファンだけでなく、世間的にも「野球の名門校」として知れ渡る存在となった。