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長髪球児がいる=“自由な野球部”のウソ「うちはそんなホワイトじゃない」“高校野球の偏見”に中央学院の本音「おしゃれコートは監督考案」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKYODO
posted2024/04/02 18:00
センバツでベスト4に進出した中央学院。“脱丸刈り”チームの一つだ
「野球に関しては自由っていう感じではなく、しっかり厳しくやってる。練習メニューも指導者から言われたことをやるという感じです」
昨年夏の慶応の優勝のインパクトが強過ぎ、つい「サラサラヘア=自由=エンジョイ」という短絡的な公式に当てはめがちだが、それはそれで偏見であることに気づかされる。山崎は言う。
「自分たちは笑顔とかじゃないです。粘り強さ、気合い、闘争心とかが強さだし、アピールポイントだと思っています」
上村も強いまなざしを向けて言った。
「言葉は悪いけど、相手を潰しにいくぐらいの気持ちでやってる。本気でやった結果、楽しかったねってなればいいんで」
上村の言葉はスポーツの本質を突いていた。
「カッコつけてんじゃねえよ」の高校球界で…
ひとつ不思議なことがあった。髪型は自由なのだから、丸刈りや短髪の選手がいてもよさそうなものだが、ほとんどいないのだ。いわゆる「サラサラヘア」の選手が大多数だった。
ある選手にそのことを問うと、言いにくそうにこう漏らした。
「いろいろあって……。相馬さん、基本的に坊主は好きじゃないと思うんです。普段から、すごいおしゃれな服を着ているので」
中央学院のグランドコートはいかにも「高校野球」というものではなく、私服としても使えそうなクラシカルなデザインのものだった。聞けば、それも相馬のデザインなのだという。
「カッコつけてんじゃねえよ」
高校野球の世界ではそんなセリフをよく耳にする。だが、相馬からは逆のメッセージを感じた。戦いの場においても見栄えに配慮するという相馬の思考も本来は普通のことである。むしろ、丸刈りでないことを特別視する世界のほうが異様ともいえる。
野球ばかりにならないよう休養日を増やしたことも、「部内クラブ」をつくったこともそうだが、中央学院が提示したものは、実は、世間のスタンダードばかりだった。