- #1
- #2
甲子園の風BACK NUMBER
「あんな経験は誰にもしてほしくない」東海大会で準優勝→センバツ落選の“不可解選考”から2年…静岡・聖隷クリストファー野球部主将のいま
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph byTakeshi Shimizu
posted2024/03/26 06:01
2年前、東海大会で準優勝しながらまさかのセンバツ落選を経験した聖隷クリストファー高の主将だった弓達寛之。現在は強豪・武蔵大野球部の2年生
学生寮での一人暮らし、自炊をしているという。近々、寮を出てアパートを借りる予定だ。
「食事の管理は自分でしてます。業務用スーパーで肉を買ってきて冷凍しています。ブロッコリーをゆでますし、味噌汁も作ります」
右の本格派のオーバーハンドピッチャー。ストレートの球速は142キロで高校時代より5キロ伸びた。数字より、速く見せることを目指している。
ADVERTISEMENT
ヒジのケガをしてからは球が浮いたり、指先の感覚も違った。痛いときの投げ方が染みついてしまって、元に戻すのに苦労したそうだ。
「高校のいい時は、ボールの高低、左右の制球力に自信があって、どのカウントでもストライクが取れた。今はその状態にかなり近づいてます。野球のレベルが上がってるので精度をもっと上げていきたい」
手術してからはベンチプレスができないので上半身の鍛え方を工夫する。また独自の考え方で瞬発系の動きを重視している。
「ピッチングは一瞬の動作。通じるのはジャンプ力、短い距離のダッシュ力、重いメディシンボールをどれだけ遠くへ投げられるか。そんなトレーニングを取り入れています」
「自主性」重視の武蔵大野球部
武蔵大の練習は平日に監督は参加しない。よって、ほとんど選手の自主性に任される。
どの時間帯でやるか、投手なら球数はどれほど投げ込むか、などは全く関知されない。周りの部員も自己管理して取り組んでいるので、さぼることは許されない。自分でやらなければ取り残される。
「自分で試行錯誤して調べてトライする。知識も身につくし成長を実感できる」
シニア時代のトレーナーにトレーニングメニューと数字の目標をもらっている。具体的な数字があれば、明確な目標になる。成果は表れているという。
「ピッチングをしていて、いいボールが行きだしたなと。質のいいボールになってる」
大きなケガをしているので、投げ込みは少ないタイプ。投げない日を多めに設けていて、それも強制されないので自分に合っている調整、練習だという。
そして学生らしく付け加える。
「野球より、勉強です」
1年次は在籍する経済学部の講義にはほとんど出席したという。履修登録表をコーチに提出していて練習に参加しない日を報告している。夜に単独の自主練習で補うなど、どちらにも集中できるのだという。