- #1
- #2
甲子園の風BACK NUMBER
「納得できるか」「納得しないといけないと思います」センバツ選出《不可解選考》問題から2年…聖隷クリストファー主将が振り返る“悪夢の瞬間”
posted2024/03/26 06:00
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph by
KYODO
春のセンバツが始まった。
低反発バットの影響か、「ボールが飛ばないなぁ」と思っていたら、豊川のモイセエフ・ニキータが見事なホームランを放った。
この豊川は東海地区から選出されたのだが、2カ月前の選考委員会で、「えっ、また」と感じたことがあった。
選考発表の中継をCS放送で見ていて、最初に東海大会優勝の豊川の校名が挙がり、2番目にベスト4の宇治山田商の校名が挙がった。準優勝の愛工大名電は3番目だった。そう、逆転現象だ。
翌日のある新聞には「豊川高校を相手にした時の比較というところを注視して検討させてもらった」という選考委員会の説明が載っていた。
今年の東海地区は出場枠が1校増えていたが、今までの2校のままなら準優勝の愛工大名電は選ばれない可能性があったわけだ。
2年前のセンバツ…聖隷クリストファーの「悲劇」
これは2年前の準優勝校、聖隷クリストファーが選ばれなかった時と同じではないか。
この時はダルビッシュ有(パドレス)や里崎智也(評論家・元千葉ロッテ)がSNSなどで私見を述べたり、国会でも取り上げられるなど、各方面で物議を醸した。
しかし、主催側は「(選考についての)詳細な内容は公開になじまない」「当該校にもこれ以上の説明を差し控えたい」との方針を発表しただけだった。
当時、筆者はある雑誌のセンバツ展望号の事前取材で、聖隷クリストファーを訪問していた。
1月の中旬だっただろうか、同校の浜松市郊外のグラウンドでは選ばれることを疑わずに溌溂とした雰囲気で練習が行われていた。
校長も兼ねる上村敏正監督は、初出場となる責任を果たした安堵の笑顔でカメラマンと筆者を迎えてくれた。
この時、主将の弓達寛之投手にもチームのキーマンとして15分ほどのインタビューをした。ヒジのケガも回復してセンバツでは投げます、と約束してくれた。
しかし、だ。聖隷クリストファーに吉報は来なかった。