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山川穂高が空気を一変させた“ある瞬間”…ソフトバンク番記者が体感“リアルな雰囲気”「キャンプ地に西武応援団の姿も」ファンの反応は?
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJIJI PRESS
posted2024/03/01 06:00
山川穂高が加入したソフトバンク。“TVには映らない”キャンプ地の雰囲気とは?
西武戦もブーイングなし…現場の空気
さらに、スタンドのファンである。満員近く埋まった内野席の一塁側の方には西武応援団も駆けつけていた。山川が姿を見せた時も、場内アナウンスで名前がコールされた時も、ホームランを放って「どすこい」ポーズを決めた時も、一切ブーイングは聞こえてこなかった。
ただ一方でウェブニュースのコメント欄やSNSではいまだ非難する声が見られ、「共感した」より「うーん」が大きく上回ることも珍しくない。ただ実際にこの1カ月間、山川を取材してきて、自主トレでも必勝祈願でも、宮崎に移動して行われた歓迎セレモニーでも、そしてキャンプ地でも罵声やブーイングを耳にしたことは一度もなかった。わざわざ足を運ぶほどの熱量をもつファンだから当然かもしれないが、ネットの世界と目前の現実に乖離を感じていた。
ところで、このキャンプ中には山川の豊富な練習量にも度肝を抜かれた。誰よりも遅くまでバットを振って、休日も返上した。
「この時期に体を張らせておく必要があるからやっているだけです。量をやればいいとは思ってない。大事なのは質です。ただ、その質を求めるために僕は量が必要だからやってるだけです」
山川が目立つ一方で…若手は?
近年のソフトバンクのキャンプは、以前に比べて練習時間がずいぶん短くなっている。最先端のテクノロジーを積極活用する球団だ。古臭いものは良しとしない。効率化が進んだ結果、練習時間が短くなったという考え方もある。加えて、選手の自主性を重要視するようになった。全体練習が終わった後は自由練習の時間が設けられていた。
すべて否定するつもりはないのだが、これから立場を確立すべき若手たちが主力級とあまり変わらない練習しか行っていないように見えたのがどうにも気になって仕方なかった。そういった中だからこそ、山川の存在感がより際立ったように感じた今春のキャンプでもあった。