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山川穂高が空気を一変させた“ある瞬間”…ソフトバンク番記者が体感“リアルな雰囲気”「キャンプ地に西武応援団の姿も」ファンの反応は?
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJIJI PRESS
posted2024/03/01 06:00
山川穂高が加入したソフトバンク。“TVには映らない”キャンプ地の雰囲気とは?
そんな“アーチショー”を見つめていた小久保裕紀監督は、その日の練習が終わると、報道陣の取材でこう話した。
「お客さんの拍手で一番彼は救われたんじゃないですか。いろんな思いでホークスのユニフォームを着て、初めて外のフリーバッティングで、これぞプロというものを見せつけた。その評価に対する拍手でしょうから」
キャンプを終えた今振り返っても、あの2日間は大きなターニングポイントだったと思う。
チームにもファンにも我々報道陣にも「山川穂高という野球選手が何者か」を知らしめるには十分だった。昨季のブランクを不安視する声も、これを境に聞かれなくなった。
そして、キャンプ仕上げの実戦が始まると、山川はまたバットで答えを示した。
実戦でも異次元…西武と“再会”も
24日、最初の対外試合だった台湾プロ野球・楽天モンキーズ戦。それは小久保監督の初陣でもあった。新監督は攻撃面について「4番打者を中心に考えていこうという野球観」と語っている。その最初のスタメン表で4番に名前が書き込まれたのが山川だった。
第1打席こそゲッツーに倒れたが、3回裏無死二塁の第2打席、初球だった。
「最初にゲッツー打っちゃったのでそれを取り返したいなとは思いつつも、やることは別に変わらないので甘い球が来たらしっかりという意識でした」
ど真ん中に来たスライダーを山川が見逃すはずがない。木製バットの快音と共に高く舞い上がった打球は左翼ポール際へぐんぐん伸びた。外野芝生席の最奥部に飛び込む、あとわずかで場外ホームランという特大の一発をお見舞いしたのである。
さらに最終日28日の西武戦である。古巣との対戦は、ここ最近はすっかり薄まっていた好奇な目で見られる機会が再燃するときでもあった。その試合でも第1打席、先発のルーキー・武内夏暉から左中間へ2ラン本塁打を放り込んだのである。
「ホームランはたまたま。本当にたまたまです。基本ホームランはたまたまです。感覚で(バットに)当たっているので。でも、打った瞬間、いい打ち方ができたのでいいかなと思います」
試合前練習中には西武の選手たちと笑顔で言葉を交わした。「(昨季まで)長いことやったメンバーなので久々に会えてとてもうれしかったですし、昔と変わらず接してくれる後輩がいっぱいいたのでうれしく思いました」と話した。松井稼頭央監督とも会話し「元気そうだねと声をかけてもらったんで、ありがとうございますと返しました」と明かした。