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「恐怖があるんです」田中希実が明かした1500mの“怖さ”…ケニアの2週間合宿で掴んだ手応え「負けず嫌いな気持ちもめちゃめちゃあります」 

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及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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photograph byAyako Oikawa

posted2024/02/28 18:15

「恐怖があるんです」田中希実が明かした1500mの“怖さ”…ケニアの2週間合宿で掴んだ手応え「負けず嫌いな気持ちもめちゃめちゃあります」<Number Web> photograph by Ayako Oikawa

テレビで対談した黒柳徹子さんのパーカーを着て撮影に応じた田中希実@ニューヨークにて

 田中は大事なレースの前に心が落ち着かず、ピリピリすることがある。大きく心が揺れ動き、それに自分自身が振り回される。

 大事なレースになればなるほど、心の振れ幅が大きくなり、周囲も巻き込んでしまう。それを申し訳なく思い、自己嫌悪に陥るという悪循環が続いている。

 特に模索中の1500mのレース前後でその心の揺れが顕著に現われる。

 東京五輪で21歳の田中は1500m準決勝で日本人女子初の4分切りとなる3分59秒19を出すと、決勝でも3分59秒95で、この種目で日本人女子初の入賞を果たしている。

 1500mが得意種目なのでは、と考える人もいるかもしれないが、本人は「恐怖があるんです」と教えてくれた。

 1500mはコロコロと局面が変わる。誰かが前に割り込んだりレースが動いた瞬間に遠慮せずに前に出たり、自らレースを動かす必要がある。

 一瞬のためらいが結果を大きく左右する。

「どう動くか分からないレースに立ち向かっていく怖さがあるんです」

 挑戦者として走った東京五輪は、練習を含めて全てがうまく噛み合って、8位入賞という結果に結びついた。しかしそれ以降の世界大会では、どこか遠慮気味で居心地悪そうに走っているように見える。

 田中は「(1500mは)まだまだ参加するだけ」と、勝負できない自分がもどかしい。

 健智コーチがその原因をこう分析する。

「経験の差ですね。東京五輪の後に1500mのレースをどんどん走らせれば良かったのですが、その機会を作れなかった。失敗してもいいからそこで走っていれば、恐怖感も含めて経験として受け入れられたと思うんです」

逆算のレースマネジメント

 東京五輪以降もコロナ禍で海外渡航には制限があり、遠征が難しかった。

「その後は1500mでなかなかダイヤモンドリーグなど高いレベルの大会に出場できず、機を逸してしまった。今は1500mは下のレベルの大会しか出られないので、自分主導で自分が思い描くレースを進めている状態です。ダイヤモンドリーグに出る選手たちは同じメンバーで転戦している。希実はまだそこに混ぜてもらっているような状態なので、そのメンバーと転戦できたら遠慮もなくなり練習の感覚でレースを走れるのかなと思う」と健智コーチは説明する。

【次ページ】 逆算のレースマネジメント

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