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甲子園の風BACK NUMBER
まさかのドラフト“指名漏れ”真鍋慧がいま明かす「なぜ順位縛りを選んだ?」スカウトと面談、名前が呼ばれない当日…退席後の“ウラ話”
text by
井上幸太Kota Inoue
photograph byKota Inoue
posted2024/01/23 06:00
昨年のドラフト会議で無念の指名漏れを味わった広陵・真鍋慧
なぜ「順位縛り」を設けたか?
まず、真鍋がプロ志望を正式に決意したのが、昨年のセンバツ終了後だった。そのほぼ同時期に、順位縛りの方針も固めていた。
4強入りしたセンバツ後、真鍋は高校日本代表候補の合宿に招集。合宿から広島に戻った後の進路面談で、中井監督に「高卒でプロに行きたい」と伝えた。決意を固めた教え子に、指揮官はこう返した。
「お前の人生じゃけえのう。お父さん、お母さんとよう相談せえよ」
真鍋の決断を尊重したが、中井監督は元来「プロは入って終わりじゃなくて、活躍しなければならない世界。大学で人間的、技術的に成長して、高い評価を受けてからでもプロ入りは遅くない」という指導方針を持つ。背中を押しつつも、未来を案じてもいた。そのため、ドラフト直前の取材では「偉そうな言い方になってすみませんけど」と前置きをした上で、こう語っていた。
「バッティングに関しては、『プロでもご飯が食べられる』ものを持っている子です。でも、守備や走塁に関しては、まだまだこれから。そういう選手なので、『育てばラッキー』じゃなくて、長所である打撃を評価していただいて、『守備も走塁も絶対に育てます』という球団とご縁があったらうれしい。そういう気持ちを持っていただける球団があるとすれば、下位ではなくて、一般的に上位と言われる順位で獲っていただけるんじゃないかなと思って。それで、スカウトの方々には『3位までに指名がなければ、進学します』とお伝えしています」
ドラフトの順位は関係ない…は本当か?
しばしば言われる「プロに入ってしまえば、ドラフト順位なんて関係ない」の言葉。この意識を持って日々の研鑽を積む必要があるのは間違いないが、全面的に正しいとは言えない面もある。
ドラフト順位によって、契約金の額は明確に区別されるし、入団後に実戦で与えられるチャンスの量にも差が出てくる。手塩に掛けて育てた教え子に、少しでもいい条件でプレーしてほしいと考えるのは、“親心”だろう。
真鍋本人にも「上位で指名される力がないと判断されたのなら、大学で力をつけて、ドラフト1位を目指したい」思いがあり、本人の決意と中井監督の親心の双方を踏まえた結論が“3位縛り”だったのだ。