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「キックオフ直前まで参考書を…」青森山田の元コーチが驚いた“進学校サッカー部”の日常とは? 選手権8強→すぐに難関大学受験へ 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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posted2024/01/16 06:01

「キックオフ直前まで参考書を…」青森山田の元コーチが驚いた“進学校サッカー部”の日常とは? 選手権8強→すぐに難関大学受験へ<Number Web> photograph by Takahito Ando

昨年の選手権王者・岡山学芸館をPK戦の末に下した名古屋高校。初の選手権でベスト8という成績を残した

「頭が良いというだけではなく、ずっと勉強を一生懸命やってきたので、諦めるということがあまりない。100点を取るために夜遅くまで勉強して、学校内や部内で点数の競い合いがある。サッカー以外でも、きちんと選手同士で闘争心を持って競い合えていることが大きいなと感じました」

「大久保さんは気の緩みを絶対に見逃さない」

 選手からしても、大久保が来たことは「本物の闘争心」を学ぶ機会になったと口にする。10番を背負い、今大会の大躍進の中心となったスピードアタッカー原康介(難関私立大を受験予定)はこう語る。

「大久保さんは僕らに隙を見せないし、いるときの練習の空気感は全然違う。求めてくるレベルが1つ、2つ上で、球際や気持ちなど、気の緩みを絶対に見逃さないんです。シュート1本、パス1本に拘ることなど、これまでなあなあですんでいた部分がすまなくなって、私生活とかでもだらしない部分があると『そこが隙になるぞ』と言われ続けました。もともと部としての規律はあった方なのですが、大久保さんがきてからより引き締まりました」

「これでいいや」では成長はない。それは日々の勉強で分かっていたことだったが、サッカーではどこか緩みもあったと正直な思いも吐露する。

「大久保さんが来た翌日からの1週間はそのままの緊張感を維持しながらやってきたつもりなのですが、次に来たときはまた初めて来たときのような緊張感になるんです。緩んでいないつもりなのに、どこかで緩んでいたのかなと思うほど、空気感が違いますし、気づくことが多いんです」

 二兎を追うことの難しさを感じながらも、やりがいも感じるようになった。国立大受験に挑むFW仲井蓮人は「正直、キツいです」と素直に認める一方で、こう口にしていた。

「勉強とサッカーのどちらも手を抜けなくて、休む時間がどんどん削られてきて、それで両方がうまくいかない時期もありましたし、夏休みも合宿、練習試合で勉強にあまり身が入らない時もありました。でも勉強とサッカーでメリハリをつけるということは大事にしていて、移動時間、隙間時間を見つけて少ない時間でも勉強することはやり続けてきました。時間の使い方はうまくなりましたし、僕たちはサッカーと勉強の明確な基準を持っているので、切り替えられるようになりました」

 24時間をデザインし、時間を作ってそれを有効活用する。サッカーに対する情熱が増せば増すほど、二兎を追うための準備、アプローチをそれぞれの中で工夫できるようになった。

「勉強もサッカーも1つの目標に向かってどうすれば達成できるかを考えるかは一緒。それまでは別物だと考えていたからうまくいかなかったのだと思います」(仲井)

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