“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「あの10番、こんないい選手だったのか」超攻撃型DFの覚醒に思わず本音が…「プロor大学進学」Jスカウトを悩ます高校生の早すぎる進路選択
posted2024/01/12 11:03
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Hiroki Watanabe/Getty Images
1月8日に閉幕した全国高校サッカー選手権。強豪校が早々に敗退する波乱続きの大会となったが、最大のサプライズは滋賀県勢としては2005年大会の野洲高校以来、18年ぶりに決勝進出を果たした近江高校の快進撃だった。
サッカー部の本格強化が始まって8年目を迎えた近江は、夏のインターハイ覇者・明秀日立(茨城)や同ベスト4の日大藤沢(神奈川)、さらに卒業後にベルギー挑戦を控えるU-17日本代表DF吉永夢希らを擁するタレント軍団の神村学園(鹿児島)を次々に撃破。決勝戦でも“ユースサッカー界の横綱”と呼ばれる青森山田を相手に最後まで堂々と戦い抜いた。
この快進撃の中心人物になったのが、DFながら「10番」を背負った金山耀太と、3バックの中央でプレーした西村想大だった。
「超攻撃型DF」と「ノーミスの頭脳」
スピードと足元の高い技術が武器の金山は、3バックの左CBを務めながら矢継ぎ早に攻撃に顔を出し、スルスルとかわすドリブル突破や正確な左右のキックでチャンスを多く演出。超攻撃型DFの神出鬼没な働きは、観る人を大いに驚かせた。
前田高孝監督が「相手の状況に応じて、左CBと左WGで使い分けている」と語るように、青森山田との決勝戦でも後半から左WGに入って同点弾をアシスト。相手に警戒される中でもしっかりと結果を出すあたりに、ポテンシャルの高さを感じさせる。
一方の西村は、182cmのサイズを生かした空中戦の強さと長短の正確なキックが武器のDFだ。しかし、それ以上に今大会で高く評価されたのが、ずば抜けた危機察知能力だった。最終ラインからピッチ全体を見渡し、カウンターリスクを見つけ出すと自らそのスペースを埋め、時に味方に的確な指示を出してコントロール。“近江の頭脳”ともいえる活躍に、準決勝で解説を担当した中村憲剛氏も「カバーはほとんどノーミスだった」と舌を巻いていた。
このプレーに魅了されたのは観客だけではない。何を隠そう、Jリーグのスカウト陣も驚きを隠せなかった。