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藤井聡太が口にした冗談「詰将棋を解くスピードが衰えた」…「タイトル戦の前日でも延々と研究」師匠・杉本昌隆が解説する「八冠の集中力の構造」
text by
杉本昌隆Masataka Sugimoto
photograph byKeiji Ishikawa
posted2023/12/23 06:05
藤井聡太の師匠・杉本昌隆は弟子の集中力をどう見ているのか。八冠は「衰えた」と冗談を口にすることもあったという
「その対象のことを好きになったり、あるいはそれを楽しめるように工夫することが、結果的に集中して取り組むことにも繫がるのかなという風に思います」(マイナビニュース 2022年7月19日)と述べています。
つまり、好きなことを見つけ、集中する体験を少しずつ増やしていくことが大切だということなのでしょう。
私が見る藤井は、タイトル戦の前日でも延々と研究を続けています。
「集中するための時間」をあえて設けていない
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集中力とは、一般的にはある短時間に一点集中して事を成し遂げていくイメージがあります。私から見る藤井の集中力を一言で表現するなら「持続力」です。
また「集中するための時間」をあえて設けていない。
勉強や仕事のできる人は、十八時になったら取り掛かろう、などと考えません。「やりたい」と思った時にいきなり没入します。時間を言い訳にしないのです。
つまり、集中の深度もさることながら、時間設定がなく、時間軸が長いのです。
短時間にゾーンに入ることはできても、それを長時間続けることは難しい。
藤井は集中力を意識しているのではなく、大好きな将棋と自分を一体化させているのでしょう。
対局中「一番集中できている時は、集中しているという実感すらないような状態になり、一分が長く感じる」(東京新聞TOKYO Web 2020年7月22日)とも述べています。
つまり、集中力とは、集中することを意識しなくなった時、初めて訪れるものなのです。
<続く>