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藤井聡太が口にした冗談「詰将棋を解くスピードが衰えた」…「タイトル戦の前日でも延々と研究」師匠・杉本昌隆が解説する「八冠の集中力の構造」
text by
杉本昌隆Masataka Sugimoto
photograph byKeiji Ishikawa
posted2023/12/23 06:05
藤井聡太の師匠・杉本昌隆は弟子の集中力をどう見ているのか。八冠は「衰えた」と冗談を口にすることもあったという
藤井は冗談で、「詰将棋を解くスピードが衰えた」と言うことがあります。昔のほうが速かったとか。もしかすると、一直線に掘り下げていくような能力については、十代後半がピークなのかもしれません。
このような、頭の絶対的な計算能力の衰えもありますが、同時に集中力がなくなっていく傾向も無関係ではありません。
将棋の技術と体力は密接に繫がっている
これはトップクラスの棋士でも同じだと思うのですが、年をとるにつれ、肉体的な疲労からなのか、どうしても短気になってしまうことがあります。読みを入れている時に、途中で打ち切ってしまうことが出てくるのです。
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やはり四十歳を超えてくると、根気がなくなってしまいがちです。勝負の局面で「もうこれくらいでいいや」というように、早々と諦めてしまうのです。
衰えが出てくると、得意とする持ち時間も狭まってきます。持ち時間が極端に短い棋戦では、反射神経の点で、どうしても若い人のほうが上回ってしまいます。ですから、三時間ぐらいの持ち時間のほうが、我々ベテラン世代には合っていると思います。
そういう意味では、将棋の技術と体力は密接に繫がっていると思います。
眼鏡で勝率が上がったケースも
そして、こうした衰えは、経験によりある程度は補うことができると私は考えます。
「経験値+落ち着いて考える時間」がベテラン世代には必要なのです。それがあれば技術・体力の衰えをカバーすることはできると思います。
また、佐々木大地七段は車の免許を取るために眼鏡をつくり、その後勝率が上がったそうです。かつて、中原誠十六世名人も、眼鏡を変えたことにより勝率が上がったという話があります。
タイトル戦の前日でも延々と研究
藤井は、集中力についてどのように考えているのでしょうか?