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厚底シューズ使用で「あるケガ」が続出…速さのウラで、指導者の嘆き「靴に頼り切ってしまっている」「人間の使い方次第」 

text by

酒井政人

酒井政人Masato Sakai

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photograph byNanae Suzuki

posted2024/01/03 06:04

厚底シューズ使用で「あるケガ」が続出…速さのウラで、指導者の嘆き「靴に頼り切ってしまっている」「人間の使い方次第」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

もはや恒例となった厚底カーボンシューズの存在。タイムは伸びる一方で”あるケガ”が続出しているという

速すぎる厚底カーボンシューズの弊害

 従来のレースシューズと比べてソールが3倍ほど厚いカーボンプレート搭載シューズは、世界のマラソンシーンを劇的に変えるほどに速い。厚底カーボンシューズが“世界基準”になった一方で、予期しなかったトラブルに見舞われている。

 もともとは着地時のダメージから脚を守り、終盤にペースを落とさないために開発されたモデルだったが、大腿骨や仙骨の疲労骨折など股関節周りのケガが続出。これは薄底シューズ時代(膝から下の故障が中心だった)にはほとんどなかったものだ。

 一体、何が起きているのか。

故障者続出の理由

 着地時にカーボンプレートをしならせることで、プレートが元のかたちに戻るときに、反発力が生まれる。それがスピードにつながっているわけだが、レース終盤は疲労からカーボンプレートをしならせるのが難しくなる。そうなると体重を前にかけて、無理にカーボンプレートを曲げようとするため、股関節周りの負荷が高まり、前述したようなケガにつながってしまうのだ。

 2021年秋の取材でA監督は、「あの靴に頼り切ってしまっているところがあるので、多くの選手がポイント練習で厚底カーボンシューズを使いたがるんですよ。練習の質を上げているので、あのシューズでないとついていけないという状況にもなっています。それが故障者続出の理由じゃないでしょうか」と分析していた。

 またB監督も“魔法のシューズ”を「諸刃の剣」と表現している。

【次ページ】 厚底と非厚底の練習を分けている

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