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「三原舞依はこんなもんで終わってはいけない」コーチからの沁みる言葉…深刻だった怪我、演技前に叩いた右足「死に物狂いでやっていきたい」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2023/12/07 11:03
NHK杯で復帰を果たした三原舞依フリーでの表情
スケート人生で初めての経験
最初のジャンプは予定ではダブルアクセル単独だったが、「構成を変えようと思って」、トリプルトウループとのコンビネーションジャンプに変えた。さらに「最後のジャンプも変えました」というように、予定していた構成からさまざまな変更があった。事前のシミュレーションに加え、滑りながら何がベストかを考えて、演技を進行させたのだ。その力となったのは、「十数年スケートをしてきた中での経験がいきた部分」だった。
11月に初戦を迎えるのはスケート人生で初めてだという。強化と調整の過程が大幅に変更をよぎなくされ、練習は満足に積むことができない。しかも今なお足首には痛みを抱える。
苦難を乗り越える演技を支えたのは、自身が育んできた土台だけではなかった。三原の言葉がそれを伝える。
「練習では、自分の今の状態に落ち込んでしまうことが多かったけれど、たくさんの方が応援してくれて、6分間(練習)でもたくさんのバナーや、『頑張れ』という声が届いていました。よかった、と思ってもらえるようにと冷静に自分を保つことができました」
「三原舞依はこんなもんで終わってはいけない」
スケート人生の中で何度も語ってきた、「会場のすべてのお客さんに届く演技を」という思い。プログラムを演じる中に、核として確固として存在する三原の信念でもある。それを貫いてきて実践してきたことを知るからこそ、観客席からの称賛と歓声という後押しもまたより大きくなったのではないか。そう考えるなら、三原を奮い立たせた励ましもまた、三原のスケート人生がもたらしたものであった。
しかし笑顔であっても、三原は手放しで喜んだわけではなかった。
「トップレベルまで、まだまだ練習が足りてないという言葉に尽きると思います」
「あと1カ月間、死に物狂いでやっていきたいです」
中野コーチも、「すぐに治るということではない」と語りつつ、エールをおくる。
「三原舞依はこんなもんで終わってはいけないし、どんどんできると思うので」
「あと1カ月間」――困難と向き合いつつ、でもあきらめることなく、思い描く世界を氷上に体現しようという思いとともに、全日本選手権を見据える。