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「三原舞依はこんなもんで終わってはいけない」コーチからの沁みる言葉…深刻だった怪我、演技前に叩いた右足「死に物狂いでやっていきたい」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2023/12/07 11:03
NHK杯で復帰を果たした三原舞依フリーでの表情
「『耐えろよ』って。滑っているときは、アドレナリンと痛み止めで何とかする、という強い気持ちをもって滑ることができました」
痛みを抱えつつ、懸命の滑りであったことが如実に表れていた。
翌日のフリーは『ジュピター』。冒頭で、ダブルアクセル-トリプルトウループのコンビネーションジャンプを着氷する。
その後の滑りでは、本来のスピードを出し切れない場面があり、ときにミスも出た。しかしショートプログラム同様、懸命の滑りを見せ、万全にはほど遠い状況にありながら、スピンとステップはレベル4でまとめた。
演技を終えると、三原は場内の大きな歓声に包まれた。得点は109.82、総合では172.64点で8位。
コーチからの言葉「痛い中で…さすがだなと思います」
試合を終えた三原は、笑顔だった。
「どんな状況でも滑りは落としたくないですし、その日、その日のコンディションで最大限の練習ができるようにしてきました」
「フリーではスピンもステップもレベル4がとれて、やってきたことが間違いではなかったと思うことができました」
三原がショート、フリーを滑り終えたあと、中野園子コーチは、夏の終わりから痛みが出てきて練習を積み重ねることができなかったこと、「大会の1週間ほど前まで歩くのがやっと」の状態であったと明かしている。そのうえで、労いの言葉をおくった。
「今日もさすがに痛い中で、いろいろな経験をいかしてまとめましたので、さすがだなと思います」
NHK杯までの状況を考えれば、まさに渾身の、現時点ではこれ以上はない演技を披露することができたことが、中野コーチの言葉に表れている。
三原も言う。
「練習が積めていない中で最後まで滑れたのは、十数年間スケートをしてきた経験だと思います」
そして続けた。
「『こういうときはこうして』みたいなのを試合前に考えることがいつも多いんですけど、フリーは4分間の中でいろいろなことを考えながら、ケースバイケースで滑ることができました」