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日本代表でゴラッソも「カマダは躍動のかけらもない」“イタリア紙、鎌田大地を批判報道”に盲点が2つ…ラツィオ機能不全と“16ゴールの男”
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/11/30 20:10
日本代表ではストロングポイントを生かしたプレーを見せている鎌田大地だが、なぜラツィオで批判が高まっているのか
イタリアDAZNの中継実況は「カマダには何が何でも止めるという気迫や執念が足りない」と冷静に断じた。
試合終盤、ラツィオはロングボールに頼りだした。指揮官サッリは「我慢してパスを繋げ」と指示を出したが、敵陣でのパスワークは著しく正確性を欠いた。反撃の糸口すら見いだせないまま、機能不全のラツィオは波乱の白星をサレルニターナに献上した。
闘志の欠片も見せなかったチームを『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙は「疑いなく今季最低の試合内容。おそらくサッリ就任以来最もひどいゲーム。主力選手の欠場は言い訳にならない」と酷評した。リーグ戦初のフル出場を果たしたとはいえ、鎌田は不甲斐ない逆転負けの戦犯とされ、「躍動のかけらもない」と評点5の落第点。
地元ローマの『コリエレ・デッロ・スポルト』紙に至っては、チーム最低評価の評点4で「失望そのもの。許し難いほどボールロストが多すぎる。インサイドハーフも満足にできないのに、ルイス・アルベルトの代役などとても務まるはずがない」とバッサリ斬って捨てた。
“カマダはゴールに絡んでナンボの選手”という認識
今、鎌田はイタリアに来て以来、最も厳しい批評に晒されている。
酷評は期待の裏返しともいえるが、現地にはそもそも“カマダは中盤から前線に絡む攻撃的プレーヤーでありゴールに絡んでナンボの選手”という認識がある。
ラツィオの中盤には、フィジカルを生かした圧力と縦への推進力が魅力のMFゲンドゥジーやバランス感覚と意外な決定力のいぶし銀ベシーノ、積極的な攻撃センスの若手レジスタであるMFロベッラなど多彩な顔ぶれが揃うが、地元メディアやラツィアーレ(ラツィオファンの通称)にとっての鎌田とは“昨季UEFAチャンピオンズリーグでの3得点を含む年間16ゴールを挙げた攻撃的MF”に他ならない。
“16ゴールの男”という触れ込みでの期待が大きい分、鎌田が水平方向にボールを回したりバックパスをするたびに彼らは戸惑ってしまう。
鎌田にも言い分はあるはずだ。ただし、基本的にウイークデイの平日練習は報道陣に公開されておらず、現在、セリエAの試合後にミックスゾーンで取材できるのは放映権を持つテレビ局とラジオ局、いわゆるステークホルダー媒体に属する現地記者のみに限定されるようになっている。
では、理解者であるはずのサッリは鎌田をどう見ているか
となれば、一番の理解者であるはずのサッリ監督に直接問いただすしかない。戦術大国きっての曲者、サッリ親分は実際のところ鎌田をどう見ているのか。
代表ウイーク直前、熱闘の末に0-0のスコアレスドローに終わったローマ・ダービー後の会見で、筆者は親分を直撃した。
<第2回に続く>