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「日本財団とマッチングしたら面白いんじゃないか」中田英寿の広げる力「社会貢献はもっと格好良くていい」という発想「楽しいし幸せを感じる」

posted2023/12/08 07:00

 
「日本財団とマッチングしたら面白いんじゃないか」中田英寿の広げる力「社会貢献はもっと格好良くていい」という発想「楽しいし幸せを感じる」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

HEROs誕生の立役者、中田英寿氏と笹川順平氏

text by

矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

PROFILE

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Kiichi Matsumoto

 現役引退後の2009年に一般財団法人「TAKE ACTION FOUNDATION」を設立するなど、社会貢献活動に精力的に取り組んできた中田英寿氏。2017年には社会貢献活動に取り組むアスリートや団体を表彰する「HEROs AWARD」を日本財団に提案し、意欲をさらに高めている。中田氏が社会貢献活動をするのはなぜか。日本財団常務理事の笹川順平氏と熱く語り合った。

――中田さんが社会貢献を意識するようになったきっかけを教えてください。

中田「僕が長くプレーしたヨーロッパではチャリティーマッチが多くあり、現役時代からよく出場していました。世界中から選手が集まって試合をするのは、社会貢献という目的ではありますが、自分たちも楽しかったんです。どのスポーツにも人を集める力はありますが、特にサッカーは世界中で行われていて求心力があります。スポーツという枠を超えて多くの人に影響を与える力もあります。例えば、引退後にアフリカなど世界中を回っている時に感じたのは、ワクチンを打ちますと言っても人は来ないけど、サッカーの試合やりますというと来るんだということ。だから、競技場にワクチンを打てる環境を作る。そのように、サッカーが人を集めるツールとして活用されているのも見てきました」

――日本ではほとんど知られていないように思います。

中田「自分自身も、実際に財団を作って様々なチャリティマッチを開催した時に、メッシやジーコを始め、世界的なサッカー選手が自分の財団を持って社会貢献をしていることが実は非常に多いということを知るようになったんです。すると今度は一つ疑問が生まれました。これだけ有名な選手が世界中で様々なことをやっているのに、なぜ情報がないのだろうか、と。だったら情報が集まるプラットフォームを作れば良いのではないかと思ったのです」

――世界ではサッカー選手に限らず、著名人が財団を持っていることが多いとも聞きます。

中田ハリウッドの有名な俳優や世界的な歌手で社会貢献活動をしている人は多くいます。彼らの活動の映像があったら、多くの人が社会貢献の大切さを楽しみながら知る機会になりますし、僕だったらお金を出してでも見てみたいと思いました。アスリートに限らず著名人の活動はそれ自体が価値のあるコンテンツになり、多くの人を動かすきっかけになるんです。この仕組みは非常に面白いですし、もっと広げられると考えています」

――著名人の活動が知られていない一方で、近年は日本国内での社会貢献に対する意識が変化しているようにも感じられます。

笹川「この10年間は、世の中に震災、コロナ、戦争が立て続けにあるという、極端な時間でした。今の学生たちが就職活動で企業に求めることの第1位は社会貢献しているかどうかです。若い世代の意識が変わると、企業は動かざるを得ません。ですから、将来的には国民の約半数は社会貢献に従事してるのではないかと思います。社会貢献するアスリートは理想の姿としてリーダーになりえますし、大きなムーブメントになる可能性があります」

「僕らはやり方が下手でした」

――そのためにも、もっと知られることが大事ですね。

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