熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
ラグビーW杯現地観戦したら“日本代表ユニで応援ヨーロッパ人”だらけ「旅行して気に入ったよ」「マナーが素晴らしい」最初は半信半疑だったが…
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byHiroaki Sawada
posted2023/10/28 11:01
日本vsサモア戦後のスタジアム。日本人以外がブレイブブロッサムズのユニフォームを着ている姿が目についた
日本選手が、サモアの巨漢の猛烈な突進に立ちふさがり、2人、3人がかりのタックルで止めると、スタンドから大きな拍手が起きる。
試合を見ていて、日本選手のフェアでありながら勇猛果敢なプレーが欧州のラグビー文化に見事にマッチしており、2015年大会以降の好成績も相まって、本場のファンたちに非常に好意的に受け止められているのが良くわかった。
さりとて、サモアの選手が軽んじられているわけでは全くない。サモア選手が見事なプレーを見せると拍手が起こるし、終盤、一人少ないサモアが驚異的な粘りで追いすがると、スタンドからサモアコールが起きた。
結局、日本が辛うじて逃げ切った。プールステージでの成績を2勝1敗とし、最終節で強豪アルゼンチンを倒せば2大会連続のベスト8入り、という状況を作った(残念ながら、10月8日に行なわれたアルゼンチン戦で27-39と惜敗。準々決勝進出はならなかった)。
日本選手のマナーは、本当に素晴らしいね
試合が終わると、両チームの選手が互いの健闘を称え合う。日本選手が、更衣室へ向かう出口の前の両側に列を作り、拍手でサモア選手を迎える。そして、今度はサモア選手が花道を作って日本選手を称える――。ラグビーの国際試合で見られる美しい光景だ。
その後、日本選手はホームスタンド前に全員が整列。スタンドのファンに向かって深々と頭を下げ、声援に感謝した。
今年3月にマイアミで行なわれたWBCの決勝トーナメントの試合でも同様の姿を見たが、これは日本代表特有の儀式だろう。日本人ファンのみならず、地元観衆からも大きな拍手が送られた。
その後、数人の選手がピッチを一周してファンに手を振る。さらに、この試合で大活躍してMVPに選ばれたレメキ・ロマノラヴァ、そして松島幸太朗、ワーナー・ディアンズらがスタンドまでやってきて、ファンの求めに応じてサインをしたり、一緒に写真を撮ったり、談笑したり――。他チームの選手も観衆に敬意を払うが、ここまでファンサービスをするチームはなかなかない。僕の隣でこの光景を見ていたフランス人のファンが、「日本選手のマナーは、本当に素晴らしいね」と話しかけてきた。
「世界中で日本が賞賛」報道に半信半疑だったが
日本のラグビーが外国人ファンからも人気があるのは、すでに世界水準に到達した競技力に加え、選手たちのフェアプレー、誠実さ、真面目さ、やさしさにあるのだろうと感じた。
これは、筆者が生活するブラジルでも常々感じることだ。他人への思いやり、悪気のなさ、親切心、誠実さ、嘘を言ったり人を騙そうとしない、といった日本で生まれ育っていたら当たり前のように身に付けていることが、外国では全く当たり前ではない。だからこそ、これらの点を高く評価してもらえる。
近年、日本のメディアでは「世界中で日本が賞賛を浴びている」という報道が目につく。