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「戦力に差があるので、正直…」箱根予選会で“地方勢”が感じた関東の壁…それでも「参加して本当によかった」と語った大学の本音とは? 

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荘司結有

荘司結有Yu Shoji

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photograph byYuki Suenaga

posted2023/10/20 11:01

「戦力に差があるので、正直…」箱根予選会で“地方勢”が感じた関東の壁…それでも「参加して本当によかった」と語った大学の本音とは?<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

箱根予選会を終えた立命館大の選手たち

立命館コーチの本音「そこまでの準備はできていなかった」

 厳しい勝負になることを想定した上で、各大学はどんな思いで立川までやってきたのだろうか。

 地方勢でいち早く参加を宣言した関西の雄・立命館大。昨年10月に就任した早大競走部OB・田中裕介コーチのもと、“箱根駅伝第100回大会出場”を掲げて始動したが、正式表明に至るまでチーム内では何度も議論を重ねてきたという。

 出雲から予選会までは中4日。その数週間後には全日本大学駅伝、王座奪還が懸かる関西学生駅伝(丹後)が控える。当初は「いち関東学連の大会に臨むより、出雲や全日本での入賞に照準を合わせるべき」との意見が多数を占めていた。しかし、チームは最終的に「箱根にすべてをぶつけてくるような大学とチーム単位で戦える一度きりのチャンス」と捉え、部員23人の総力戦で戦い抜くことを決めた。

 あえて厳しい戦いに臨んだ選手たちのレースを、指揮官はどのように見ていたのか。

「もう少し上積みがあるかなとは思っていましたが、基本的にうちの選手たちはみんなベストを尽くしてくれたと思っています。その上で通過ラインが63分台平均というところで、そこまでの準備はできていなかった。ただ選手たちは考えられる範囲でしっかり走ってくれたので、素直に力不足だったと思います」

 チームが箱根路に挑戦した背景には、来年に向けた強化の意図もあった。大森や山﨑皓太(3年)らエースたちが最終学年となる来年度、チームは全日本でのシード権獲得を見据えている。指揮官には、予選会出場という“強化プラン”を通じて、これまで駅伝経験のない選手たちにも大舞台での経験を積ませ、もう一段階底上げした状態で来年を迎えたい――との思いがあった。

「全国に広げてもらえるのならという思いもありますが…」

 結果としてチームは通過ラインに届かなかったものの、大森と山﨑を筆頭に12人中5人が自己記録を更新。ハーフ初出走の4人のうち、尾上陽人(2年)が65分17秒をマークするなど、選手それぞれの成長が垣間見えた。田中コーチも予選会へのチャレンジを通じたベースアップに手応えを感じている。

「結果は置いておきまして、ここに至るまで駅伝を経験したことのない選手たちが高いレベルの練習をこなせるようになったので、底上げはできたのかなと。全日本では長い区間が弱い面があるのですが、この挑戦を通して苦手意識を払拭して、長い距離でも走れるんだという自信をつけさせてあげられたのかなと思います」

 出雲駅伝では総合15位。「どうしても後ろにハーフの試合が控えているという潜在的な意識もあって、短い距離に対する調整が上手くいかなかった」と明かすが、それでも立川の地で得たものは大きかったようだ。「全国に広げてもらえるのならという思いもありますが、この大会は関東学連さんが作ってきたものなので色々な難しさもあるのかなと……。ただ、この高いレベルのレースをテレビの前で『速いね』と見ているのではなく、実際に一緒に走って感じるものが非常に大きいのかなと思います」

【次ページ】 「参加して本当によかった」と語った大学の思い

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