「弱点なんて見えるわけがない…（苦笑）」

　野月は昨年12月にB級2組順位戦で藤井と対戦して惜敗した。対局前の取材では「弱点なんて見えるわけがないですよ（笑）。藤井さんがどうこうよりも、まずは自分の力を出すこと。それしかありません」と真っすぐに語っていた。

　一方、深浦は「いやー……。豊島さんに教えてほしいですね」と苦笑した。

　竜王の豊島将之は棋界の第一人者で、藤井に6戦全勝している。だがその豊島はきっぱりと語っている。

「藤井さんは18歳、自分は30歳で同じ二冠です。18歳は普通にやっていてもドンドン強くなる時期なので、今後はさらに厳しくなりますね」

　景気のいい言葉は簡単には出てこない。それだけ昨夏の藤井は鮮烈だったのだ。それでも皆が藤井との対戦を恐れているわけではない。強敵にぶつかっていく姿勢はアマチュア時代から培っている。負けず嫌いの男たちはそうして強くなったのだ。

　誰にも負けたくない――。彼らもまた、大きな志を抱いて日々の研鑽に努めている。

　取材に応じてくれた棋士の何人かに尋ねた。また藤井と対戦したいか？

　皆、口を揃えて言った。

　イエス。今度は、即答だった。

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