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アルゼンチン戦ドロップゴール、サプライズ選出&緊急出場もレメキ34歳はなぜ活躍できた?「ポジション変更が余裕を与えていた」 

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野澤武史

野澤武史Takeshi Nozawa

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/10/11 17:00

アルゼンチン戦ドロップゴール、サプライズ選出&緊急出場もレメキ34歳はなぜ活躍できた?「ポジション変更が余裕を与えていた」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

アルゼンチン戦の後半、一時2点差に迫る40m超えのドロップゴールを決めたレメキ・ロマノラバ。活躍の背景を野澤武史氏が解説する

 一方で、今回の日本代表では本職であるフルバック(15番)を任されました。最後方からグラウンド全体を眺めることができ、最もスペースが与えられているポジションです。ボールタッチ数ならば10番と比べて5分の1くらいでしょうか。実際に10番の選手を15番にコンバートした経験がある元日本代表FBの栗原徹氏(浦安D-Rocksコーチングコーディネーター)は「1試合でじっくり前を見るために与えられている時間ということを考えれば、15番に比べて10番は100分の1ぐらい。それほど瞬時の判断を求められているので、逆に10番をやっていた選手が15番に戻ると、めちゃくちゃ余裕が持てる」と話していました。

野球で例えると、投手から捕手への転向

 野球に例えるならば、試合の中では“王様”であるピッチャー(10番)が、グラウンド全体を視野に入れる扇の要・キャッチャー(15番)をやるような感覚かもしれません。全く違うポジションを経験することによって試合に対する解像度が上がって見える。15番が10番をやるというメリットはそこにあるんです。

 私の個人的な感覚ですが、15番だった選手が指導者になると1つのフェーズに対する完璧度やこだわりが高い。これはそもそもボールタッチが少なく、ゲームの流れを後ろから見ていた経験が「全ての局面を成就させたい」という思いに至らせているのではないでしょうか。一方で10番は瞬時に判断する分、割り切りもつく。一連の攻撃をストーリーで捉える指導者が多いように思います。レメキも2014年から6年間所属しFBを任されたホンダ時代などは、ボールを持つと絶対に目の前の敵を抜く、最高のプレーをしてやろう、というような意図が感じられましたが、10番を経験してフルバックに戻ったことで余分な力が抜けたように見えました。

レメキは2つのステップを使いこなす

「弱いチームに対してはそこそこだけれど、強いチームに対してはめっぽう強いという典型的ないい選手ですね」と栗原氏はレメキについて評しています。実際にイングランド、サモア、アルゼンチンといずれも日本より世界ランキング上位のチームに対して抜群の強さを見せた34歳。ポジションが変わったことで増えた技術の引き出しはそのままに、安定感と余裕が生まれたことで多面的な輝きを放っていました。

【次ページ】 「豪脚」ではなく「しなやか」

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