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“猛暑なのになぜ長袖?”甲子園の高校球児「じつは441人中205人が長袖だった」高校野球の新常識「敵は太陽の光…“着るエアコン”ブーム」 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byNaoya Sanuki

posted2023/09/16 17:04

“猛暑なのになぜ長袖?”甲子園の高校球児「じつは441人中205人が長袖だった」高校野球の新常識「敵は太陽の光…“着るエアコン”ブーム」<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

107年ぶりに優勝した慶応高。先発メンバーは長袖を着ていた

 元広島の黒田博樹投手がオンヨネのアンダーシャツを愛用していて、試合中、ほとんど着替える必要がなくなったというのは有名な話です。ピッチャーの場合、夏場は毎イニング、アンダーシャツを着替える選手もいるらしくて、そうなると荷物が多くなって大変なんですよ。この夏の甲子園では5回と6回の間に10分間のクーリングタイムが設けられたので、あの時間で着替えたい選手は着替えもできたんじゃないですか。1つ驚いたことがあったんですけど、慶応の選手はユニフォームの上も着替えるんですかね? 決勝でキャプテンの大村(昊澄)君のユニフォームが6回から上だけきれいになっていて。おそらく、背番号は大会サイドから支給されるので、1枚しか持っていないはずなんだけど……。どうやって付け替えたんですかね。あるいは何らかの方法で、背番号を2枚用意していたのか。アンダーシャツならともかく、ユニフォームの上まで着替える選手は初めて見ましたね。

来春から「飛ばない金属バット」に

――バット戦線は相変わらずでしたね。ミズノの「VKONG」シリーズとSSKの「スカイビート」シリーズの2強が、やはりこの夏も主役でした。2024年の選抜大会から新規格バットへ移行することが決まってからというもの、ここ2、3年、各メーカーのバット開発はストップしたままなので仕方ないですよね。

 ただね、今年は全部で23本のホームランが出たのですが、最初の1本と、最後の1本、つまり慶応の1番打者、丸田湊斗君が決勝で放った先頭打者ホームランのバットは、いずれもミズノの「VKONG 02」だったんですよ。金属バットの歴史上、最高傑作といっていい「VKONG」シリーズが、旧規格バットの最後の大会で最初と最後を飾ったんです。あれは感慨深かったですね。

――有終の美を飾ったわけですね。新規格バットは少し細くなって、素材は分厚くなるんですよね。

 バットの最大径が67ミリから64ミリに、厚みは約3ミリから約4ミリ以上に変更になります。厚くすると、トランポリン効果っていうんですけど、たわみが小さくなって反発力がおさえられる。打球スピードも、飛距離もかなり落ちると思います。僕自身、このNumber Webの取材を受けるようになってから「金属バットの打球音を聞いただけでメーカーと型がわかる男」として、業界ではちょっと名が知れ渡ったんですけれども、その肩書きはしばらく使えなくなると思います。というのも、打球音も相当、変わってしまうでしょうから。肉厚になるぶん、価格は1万円くらい高くなるんです。1本2万ぐらいだったバットが3万ぐらいになる。厚みを出すぶん、製造工程が大変になるみたいです。

韓国の高校野球では「投手のレベルが落ちた」

――明徳義塾の馬淵史郎監督に取材したとき、新規格バットは木製バットの感覚にだいぶ近づいたと話していました。新規格の金属バットは900グラム以上という規定があるので、だったら重さの縛りがない木製バットの方が有利なんじゃないかと話していましたが。

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