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「“坊主頭でなくて良いよ”って」元巨人→野球塾から東北高を率いる異色指導者・佐藤洋が目指すもの「1日1日を嘘つかないで…」 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2023/10/18 11:03

「“坊主頭でなくて良いよ”って」元巨人→野球塾から東北高を率いる異色指導者・佐藤洋が目指すもの「1日1日を嘘つかないで…」<Number Web> photograph by Kou Hiroo

東北高校監督として奮闘する佐藤洋氏

 所属しているチームでレギュラーが取れないということで塾に来ているんですが、子供もそうですけど、親も本当に苦しんでいたんです。指導者に怒鳴られたり、過酷な指導をされたり、少年硬式野球クラブってずいぶんお金がかかりますけど、ちょっとガリ勉の野球版みたいになっていたんですね。

 当時はまだ「野球離れ」の兆候はなかったのですが、このままでは多分野球人口は減るぞ、楽しくない野球なんて誰も選ばないと感じていました。だから野球指導者に「お茶当番などはやめた方がいいですよ」、「こんなところでタバコを吸わない方がいいです」、「怒っちゃ駄目ですよ」とか、いろいろ言い始めたんです〉

少年野球の未来を案じて“安全な空間を”

 筆者が佐藤氏と初めて顔を合わせたのは、少年野球の未来を考える会合の席上でのこと。その会合は、プロ野球、大学・高校野球の指導者や医師、ジャーナリストなどが集まって、少年野球の未来について意見交換をしていた。佐藤氏は、物静かではあったが口を開けば、寸鉄人を刺すような、鋭い批判をした。一家言ある人、という印象だった。

〈講演会などでも、いろいろ問題点を指摘していましたから、喋れば喋るほど敵ばかり作りました。今の少年野球は勝利至上主義で固まっています。選手たちはその被害者です。

 選手たちは週に1回僕の野球塾に来ます。そこで楽しい経験をする。あそこに行けば怒られないし、楽しい。だから、選手たちはみんな喜んでうちの塾にくるわけです。親は、打てるようにしてほしいとか、野球を教えてもらいたいと思っているんですが、僕はそういう発想がなくて、安全な空間を作りたいと思っていた。

 打てない選手をすぐに打てるようにするような指導ができる自信はなかった。「通っているうちに今よりは良くなりますよ、でも明日の試合に勝ちたい、安打を打ちたいと言うのなら、うちでは無理ですから他所に行ってください」と言っていました。それでも選手の技量は上がっていきました〉

無理に投げて故障するなど、涙が出ることも

 佐藤氏の野球塾の評判は高まっていった。

〈子供だから日に日に体が大きくなって成長します。よく「俺はあの選手を育てた」などと言いますが、違いますね。できることは、自然に成長するのを邪魔しないことです。

 教室には肘や肩を痛めている子も来ました。そういう時には絶対投げさせてはいけない。でも親も子もそれをチームの指導者に報告できない。「他の子にも迷惑がかかるから投げさせたい」という親もいた。もちろん、最終的にはその子と親の判断です。無理に投げて故障するなど、本当に涙が出るくらい嫌な思いをたくさんしてきました〉

 このように、佐藤氏は孤軍奮闘していた。

 しかし、実は少年野球改革のために尽力する指導者は、全国にいた。

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