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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「“坊主頭でなくて良いよ”って」元巨人→野球塾から東北高を率いる異色指導者・佐藤洋が目指すもの「1日1日を嘘つかないで…」
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2023/10/18 11:03
東北高校監督として奮闘する佐藤洋氏
〈とりあえず秋季大会を勝って、春の甲子園に出るぞ、と。はったりです。根拠はないけど言ってしまったんですね。でもそこからみんな『そこに行くにはどうしたらいいか』を考え始めた。部室は汚いし、グランドも汚い、ベンチなんか掃除もしていない。寮も食ったものがそのままになっているし。それでは絶対に甲子園なんか行けない。そのためにはどうすればいいかをちゃんと考えてやろう、と〉
東北高校の校門横のコンビニで、筆者は整髪料の香りがする長髪の高校生を見かけた。彼は「野球部」のバッグを肩にかけていたが、普通の高校生より大人びて、落ち着いて見えた。
〈髪の毛の話は最初にしましたね。坊主頭でなくって良いよって。ユニフォームも暑いんだから練習では短パンTシャツで全然いいよって。静かすぎるから音楽鳴らせって。それをしたから勝てるわけじゃないんですが、極端から極端に短期間で変わらなくちゃいけない。
そのさなかに県大会が始まって、仙台育英に勝っちゃった。お前ら何やっちゃってんだよって、育英なんて100回やって1回しか勝てないだろう、それをここで出してどうするんだって。そこからとんとんとんと行っちゃった。一つ成功例が出てきて日に日に変わっていったんですね。その結果、ほら言うとおりになったでしょって〉
レギュラーだけでなく、一人一人が結集していこう
2016年夏以来、7年ぶりで出場した春の甲子園では、優勝した山梨学院と1回戦で当たって1−3で敗退した。
試合では、選手がWBC日本代表ラーズ・ヌートバーの「ペッパーミルパフォーマンス」をまねたことが、審判の注意を受けて話題になった。
〈あれは自然なパフォーマンスってことですよね。相手を侮辱してるとか、全くそんなのないです。うちはどこよりも相手をリスペクトしてるし、別に相手チームに向かってやってないですから〉
今、部員数は76人。最近「名門」と言われる強豪校では部員数を絞り込む傾向にあるが、佐藤氏は試行錯誤の段階にあるようだ。