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「“坊主頭でなくて良いよ”って」元巨人→野球塾から東北高を率いる異色指導者・佐藤洋が目指すもの「1日1日を嘘つかないで…」 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2023/10/18 11:03

「“坊主頭でなくて良いよ”って」元巨人→野球塾から東北高を率いる異色指導者・佐藤洋が目指すもの「1日1日を嘘つかないで…」<Number Web> photograph by Kou Hiroo

東北高校監督として奮闘する佐藤洋氏

 前述した少年野球の未来を考える会合などで、同じ考えを持つ指導者と意見交換をするようになって、佐藤氏の視界は拡がっていった。

〈筒香嘉智選手や森友哉選手が中学時代プレーした大阪の堺ビッグボーイズを見に行って、代表の瀬野竜之介さんなどとも意見交換した。すごくいい雰囲気のチームでした。

 嫌な現実はあったけど一方で、こういう人たちとつながれば自分たちが目指してきたことが実現できるんじゃないかと思いました〉

みんなの力が必要だ。だから力を貸してくれ

 野球塾は20年以上も続いた。子供たち、父母の信頼も篤かったのだが、昨年、転機が訪れた。

〈去年の6月に、関係者の方々の後押しもあって、東北高校の手伝いを1カ月間したんです。そのときに“これじゃ勝てないな、選手の意識も環境も全く整っていない”と感じました。選手がみんな指示待ちになっていて、自分では動こうとしていなかった。その中でレギュラーだけが練習してその他大勢は遊んでいる。親御さんから預かった大事な選手なのに……「東北高校ってそうじゃねえぞ」と。

 学校から監督就任を依頼されたときは、一度はお断りしたんです。だって埼玉で野球塾をやっていて大事な生徒もいるし、親もいるし。いろいろあったんですが、最終的にはお引き受けすることになりました〉

 20年以上続けて、選手、父母、OBから絶大な信頼を得ていた「野球塾」をどうするのか? 佐藤氏は大いに悩んだ。いろいろな話し合いがあったが、塾を仲間に託して仙台市に単身赴任することにした。昨年8月に東北高校の監督に就任。還暦を過ぎての新たな出発だった。

〈監督になって、まず選手に少年野球、野球界の現状を紹介して、僕がやりたい、目指している野球について話をしました。ここにいる選手たちはずっと野球をしてきて、ふるいにかけられて高校野球の世界に入ってきているけど、少年野球はやる人が減って、楽しくなくなってきている話です。

 “学校を強くしてくれ”と言われるんだけど、それだけじゃないんだよ。野球界を何とかしようっていう取り組みなんだ。これは僕がいくら騒いだって、できることじゃなくて、みんなの力が必要だ。だから力を貸してくれと〉

髪の毛の話は最初にしました。坊主頭でなくって良いよと

 そしてこのあと——佐藤氏は耳を疑うような宣言をしてしまう。

【次ページ】 レギュラーだけでなく、一人一人が結集していこう

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