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韓国→ニュージーランド→大分へ…原点は父の「ラグビー英才教育」韓国出身プロップ・具智元が“桜のジャージ”を選んだ「納得のワケ」
posted2023/09/11 06:02
text by
山川徹Toru Yamakawa
photograph by
Kiichi Matsumoto
具智元は、W杯日本大会で日本代表の鍵を握るプレーヤーである。184センチ、119キロの右プロップ。日本代表スクラムの支柱だ。
現在、三重県鈴鹿市に本拠を置くホンダヒート(現三重ホンダヒート)で汗を流す具は、太い眉が印象的な青年である(※所属等は『国境を越えたスクラム』刊行時の2019年8月時点)。訥々とした語り口が、飾らない風貌と相まって、素朴な人柄を印象づける。
「スクラムの面白さは分かりにくいかもしれません。でもぼくはボールを持って独走してトライするよりも、スクラムを押しこんで相手のボールを奪うことに快感を覚えるんですね」
なんと言えばいいか……と、彼はラグビー経験者でもプロップの選手以外にはなかなか分からないスクラムの魅力について説明する。
「海外のスクラムは個々のパワーにまかせてバラバラに押してくる。身体が小さい日本代表がパワーに対抗するには、スクラムを組む8人が結束するしかない。一つの塊になって、全員の意志と力を一点に集中させて、相手のスクラムを分断していく。そんなイメージのスクラムがぼくの理想です」
元韓国代表の父との二人三脚
父は元韓国代表の伝説とも言えるプロップの具東春。1980年代、スクラムの要として幾度となく日本代表の前に立ちはだかったプレーヤーで、金(※金喆元。戦後、韓国出身者としてはじめて日本代表となった選手)を三重県の朝明高に紹介し、日韓ラグビーの橋渡し役も担う人物である。
「スクラムマシーンになるな!」
中学時代、父の叱咤を受けた具少年は、涙を流しながら山道を走っていた。当時、170センチ、100キロ。走力に難がある息子に、父はスクラム以外のプレーを身につけさせようとしていたのである。