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“賛否両論の吉田輝星881球”から5年、夏の甲子園「球数・継投」どうなった? 慶応エースは362球、全校最多の仙台育英・湯田統真でも… 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2023/09/04 11:04

“賛否両論の吉田輝星881球”から5年、夏の甲子園「球数・継投」どうなった? 慶応エースは362球、全校最多の仙台育英・湯田統真でも…<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

2018年夏の甲子園、1人で投げ切った金足農・吉田輝星(写真中央)。そこから5年、仙台育英や慶応のような投手運営が増えている

 準優勝の仙台育成のエース湯田統真が最多投球だが、6試合のうち先発は4試合。8月6日の1回戦から23日の決勝戦までの18日間で412球であり「7日500球」の日本高野連の球数制限をはるかに下回っている。

 この数字からも高校野球の「投手の分業」が進んだことを実感する。

慶応と仙台育英投手陣に見る「先発2人+救援」スタイル

 慶応は2年生エースの小宅が362球。注目したいのはP/IPの高さ。投球回数は土浦日大の藤本士生と並ぶ大会最多の28回だが、投球数は4位。P/IPは1イニングの投球数の目安とされる15球をはるかに下回る12.93。無駄球の少ない効率の良い投球をしていたのだ。2019年、P/IP12.39で5試合41.1回を投げた星稜・奥川恭伸の洗練された投球を思わせる。

【慶応と仙台育英の投手陣】
〈慶応〉
362球 小宅雅己(右)2年
(5試28回15三 率0.64)P/IP 12.93
185球 鈴木佳門(左)2年
(4試12回7三 率3.00)P/IP 15.42
94球 松井喜一(右)3年
(6試94回5三 率6.00)P/IP 15.67

〈仙台育英〉
412球 湯田統真(右)3年
(6試25.1回31三 率3.20)P/IP 16.26
286球 高橋煌稀(右)3年
(5試17回20三 率4.24)P/IP 16.82
103球 田中優飛(左)3年
(3試7回2三 率5.14)P/IP 14.71
44球 武藤陽世(左)2年
(1試2回2三 率0.00)P/IP 22.00 
40球 仁田陽翔(左)3年
(2試2.2回0三 率0.00)P/IP 15.00

 トップクラスの高校は先発2人に救援投手を準備するのが標準になりつつあるのだ。

 慶応は右の小宅、左の鈴木が2年生。高校生は変化が著しいから軽々な予測はできないが、来季の甲子園も激戦区・神奈川の有力候補ではあろう。

 慶応・森林貴彦監督の「エンジョイベースボール」が全国的に注目を集める中、投手運営という観点でも高校野球そのものが大きく変わろうとしているのを数字からも実感できた。

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