酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
“賛否両論の吉田輝星881球”から5年、夏の甲子園「球数・継投」どうなった? 慶応エースは362球、全校最多の仙台育英・湯田統真でも…
posted2023/09/04 11:04
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Hideki Sugiyama
慶応義塾高校の107年ぶりの優勝がクローズアップされている今夏の甲子園だが、投手起用に関しては「劇的」と言っていい変化があった。
筆者は2015年からの甲子園出場各校の投手起用数、球数などの投手成績を追いかけている。
1試合当たりの両チーム投手起用数が「5.46人」に増加
以下は2015年以降の投手の「延べ起用数」の推移。( )のカッコ内は1試合当たり両チームの投手起用数。2020年は夏の大会は開催されず。
2015年 48試 213人(4.44人)
2016年 48試 192人(4.00人)
2017年 48試 215人(4.48人)
2018年 55試 212人(3.85人)
2019年 48試 212人(4.42人)
2021年 48試 195人(4.06人)
2022年 48試 231人(4.81人)
2023年 48試 262人(5.46人)
通常の大会は参加校49、試合数は48。2018年は記念大会で参加校が56に増え、試合数も55に増加している。両軍投手がすべて完投すれば投手起用数は試合数×2となり、1試合当たり両チームの投手起用数は(2人)になる。
「障害予防」の球数制限から複数投手制に
2018年夏、金足農(秋田)の吉田輝星(現日本ハム)が決勝戦までほぼすべて1人で投げたことから、投手の酷使が問題視され、2019年に日本高校野球連盟が「投手の障害予防に関する有識者会議」を設置、1年かけて検討をした結果、2020年春の甲子園から「7日間で最大500球」の球数制限の導入が決まった。
2020年は新型コロナ禍で春夏共に大会は中止となり、2021年から適用された。2021年に起用された投手数は球数制限導入前の2019年より減少。「球数制限」の効果は数字からは見られなかったものの、2022年の延べ起用数は231人、そして2023年は262人となり、1試合の投手起用数も初めて5人を越え、複数の投手を起用する傾向が明白になった。
これまで多くの高校では1人のエースを盛り立てて試合を勝ち進むスタイルが多かった。それを複数の投手による継投や先発ローテーションのシステムに切り替えるまでに、3年の歳月を要したと見るべきではないか。
また今年の夏の甲子園には、高校野球のリーグ戦であるLiga Agresivaの参加校が、優勝した慶応(神奈川)、ベスト8のおかやま山陽(岡山)、東京学館新潟(新潟)、立命館宇治(京都)と4校も出場した。これらの高校ではリーグ戦でアメリカの「ピッチスマート」に準拠した厳しい球数制限をしている。投手の継投は当たり前になっている。