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「なぜ立命館じゃダメなんだ」と反対も…名門・諫早の女子高生ランナーは、なぜ“新設陸上部”の大学を選んだのか「伝説を作る側になってみたい」
posted2023/08/13 17:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Nanae Suzuki
大学というよりも大東文化大に行きたい
森智香子の人生は、フロンティアスピリットに満ちている。
長崎県の諫早高校でスピードランナーとして名を馳せた森は、卒業後は実業団に入り、世界を目指すことを考えていた。だが、陸上部の松元利弘監督から「大東文化大学から話が来ているから」と言われ、話を聞いてみることになったのが転機となった。
同席したのは大東文化大の外園隆監督とコーチ。そのコーチは日本陸上競技連盟の全国合宿で動き作りを教えてくれた人だった。不思議な縁を感じて、監督の話を聞いた。
「監督が『大学の女子は駅伝重視ですが、うちは大学4年間で終わる選手ではなく、大学で土台を作って実業団に送り出したい』という方針をおっしゃったんです。それを聞いた時、大学というよりも大東文化大に行きたいって思いました」
女子長距離部門は新設して2年目
当時、大東文化大の陸上競技部女子長距離は、創部して2年目。新設で部員も少なく、女子駅伝の強豪校でもなかった。一方、諫早高校は全国高校女子駅伝で2度、制覇を果たした強豪校。普通は大学も同じレベルを目指していくが、森の思考はちょっと違った。
「高校が伝統校で過去の先輩たちの話をずっと聞いてきていたので、大学では自分が語り継がれる側になってみたい、伝説になる側になってみたいと思ったんです」
外園監督の話を聞いた時点で大東文化大への進学をほぼ決めていた。ところがその決断に家族と校長から“待った”がかかった。
大学なら大東文化大じゃなくてもいいだろう
「私は、大学というよりも大東文化大の姿勢に共感して行くことを決めたんですけど、周囲は『大学に行きたいのか。大学なら大東文化大じゃなくてもいいだろう』っていう話になって。当時は立命館大学が強かったので、なぜ立命館じゃダメなんだって反対されたんです」