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「なぜ立命館じゃダメなんだ」と反対も…名門・諫早の女子高生ランナーは、なぜ“新設陸上部”の大学を選んだのか「伝説を作る側になってみたい」 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byNanae Suzuki

posted2023/08/13 17:00

「なぜ立命館じゃダメなんだ」と反対も…名門・諫早の女子高生ランナーは、なぜ“新設陸上部”の大学を選んだのか「伝説を作る側になってみたい」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

長崎県の長与町出身の森智香子。かつて諫早高校の注目ランナーだった森が選んだのは女子陸上界では“無名”と言える大東文化大だった

18歳で実業団に来ていたら…

 挑戦する先は、積水化学に決まった。森にとって大学4年間は充実した日々で、その後の成長には欠かせないものだった。

「18歳で実業団に来ていたら、ここまで長く続けていなかったでしょうね」 

 森は、そう語る。

「大学では、競技面においては動き作りですとか、基礎をしっかりと固めてもらったので、実業団にうまく繋げることができました。スポーツに特化して4年間、学ぶことができましたし、陸上に限らずいろんな人との関わり合いで社会性も身に付けることができたので、自分にとってはすごく大きな4年間でした」

お前の話を聞いて安心したよ

 大卒後、社内で感じたのは、高卒の選手との経験の差だった。高卒の選手が社内で話をしている姿を見ると競技力とは異なる幼さを感じ、大学でいろんな人と出会い、話をしてきたことで得られた経験の違いが見えた。

「高校から“人間力”というのをずっと言われてきたのですが、大学でも競技の前に人としての部分をすごく育ててもらえたと思います」

 森は大学の卒業式の際、競技実績に対し表彰をされ、代表の挨拶をする機会があった。その際、「大学で学び、経験したことで成長することができました。それが社会に出ても活きていくと思います」と語った。それを聞いた監督は、森にこう語った。

「お前の話を聞いて安心したよ。自分の役割を果せたなぁと感じた」

 外園監督が望んでいたのは、まさに人間的な成長だったのである。

 積水化学に入社した森は実業団選手として過ごしていく中で、思わぬ「誹謗中傷」に直面する――。<#2に続く>
#2に続く
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