格闘技PRESSBACK NUMBER
朝倉未来の衝撃タップアウト負けは「ただただケラモフが強すぎた」…“地味な選手”が大舞台で示した「ハリトーノフ級の危険な闘争本能」とは
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2023/08/05 17:02
一方的な展開で朝倉未来からタップを奪い、RIZINフェザー級王座のベルトを巻いたヴガール・ケラモフ。母国アゼルバイジャンにビッグニュースを届けた
「人としての根本的な強さ」を分かつもの
RIZINフェザー級チャンピオンとなったケラモフは敗者を讃えた。
「朝倉選手と闘うとわかったときから、楽な試合にならないことはわかっていた。自分としても入念な準備をしてきました。自分がひとつでもミスすれば、そのミスを逃すことなくついてくる相手ですから、これまでの2倍も3倍も用意周到に練習してきました」
この発言を耳にしたとき、筆者は「RIZINのチャンピオンベルトを腰に巻いたら、国からオリンピックのメダリスト並みの特別報奨金が支給される約束があったのではないか」と勘繰ってしまった。今度話をする機会があれば、直接ケラモフに突っ込んでみたい。
試合後、新チャンピオンは「アゼルバイジャン大会では母国の美味しい料理を味わってほしい」とPRに努めていたが、少なくとも同国を訪れたことのある複数の知人からは「料理が美味しかった」という話は聞いたことがない。かつてアゼルバイジャンに日本のレスリング選手団が遠征した際には、現地で合流した取材記者全員が食中毒になったこともあった。
豊富な石油資源を武器とした国の発展とともに、衛生面も劇的な進化を遂げたことを祈りたいが、個人的にはアゼルバイジャンの隣国イランで食べた羊肉のバーベキューを思い出さずにはいられなかった。香辛料でどんな味付けをしても強烈な獣臭が決して消えない、日本では絶対に味わえないあの肉を。残念ながら途中で食べられなくなってしまったが、その一方でこうも思った。
「こんな刺激の強い肉を常日頃から食べていたら、獣のようなパワーを手に入れられるかもしれない」と。
環境の違い、食文化の違い、“満ち足りた者”と“持たざる者”の違い。そういったものによって、人としての根本的な強さは違ってくるのだろうか。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。