濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「やれよ!」悪質ブーイングも…当事者が語った堀口vs神龍“25秒ノーコンテスト”の一部始終とは?「無謀な試合続行」を求める観客はなぜ生まれたか
posted2023/08/01 17:03
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
格闘技の“プロ”とはどういうものか。その“プロ”とファンの関係はどうあるべきなのか。わずか25秒の試合で、いろいろなことを考えさせられた。
7月30日、さいたまスーパーアリーナで開催された『超RIZIN.2』。前半はアメリカのメジャーMMA団体ベラトール(ケージ)、後半はRIZIN(リング)と2部構成のプログラムで、ベラトールパートでは初代フライ級王座決定戦も組まれていた。
25秒での「ノーコンテスト」
対戦したのは堀口恭司と神龍誠。日本人対決だ。堀口はUFCでタイトルマッチまで経験するとRIZINとベラトールでバンタム級王者に。日本人選手として最高レベルの結果を残してきた。現在は適正階級のフライ級に戻し、そこで組まれたのが神龍との試合だ。
RIZINで所英男を下したことでも知られる神龍は23歳。国内における出世争いの最前線であるDEEPのベルトを18歳で巻いている。昨年はアメリカのCFFCでもインパクト絶大な一本勝ちで戴冠。堀口とのベラトール王座決定戦は、世界のベルトを争う試合であると同時に“メジャーリーガーvs日本最強”、あるいは“フライ級世代闘争”としても注目された。
神龍は自分より格上の堀口相手にも自信満々。堀口を何度も挑発し、物静かな堀口も珍しく「試合がつまらない」、「クソガキ」と返した。
実績で上回る堀口が下馬評では有利、しかし神龍の勢いもあなどれない。緊張感あふれる、そしてMMAの魅力に満ちた試合が期待されたが、試合は開始25秒で終了。神龍の続行不能によるノーコンテスト(無効試合)だ。
なぜ堀口の拳は握られていなかったか?
お互い序盤からアグレッシブに打撃を繰り出していた。その中で堀口の指が神龍の右目を直撃してしまう。神龍は右目が見えない状態となり、試合はストップされた。アクシデントによる負傷は格闘技につきものとしか言いようがない。堀口によると相手の手を払おうとしたそうだ。パンチを打とうとしたわけではないから拳を握っておらず、しかも両者とも攻め気で距離が近くなり、結果として指が入ってしまった。
インタビュースペースで、神龍がノーコンテストに至った状況を説明してくれた。
「これで続行しても、と思って正直に“見えないです”と(ドクターに)言いました。こっち(自分の右側)から攻撃されたら見えないので。このままやったらまずいかなと」