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「金原からサインもらったけど、別にいらねぇよ」格闘技界でもオジさんは生きにくいのか? “KIDに勝った男”金原正徳40歳の告白

posted2023/04/28 17:00

 
「金原からサインもらったけど、別にいらねぇよ」格闘技界でもオジさんは生きにくいのか? “KIDに勝った男”金原正徳40歳の告白<Number Web> photograph by Susumu Nagao

2009年の大晦日、山本“KID”徳郁に勝利した金原正徳。しかし格闘技人気が下火になっていたこともあり、スターダムに駆け上がることはなかった

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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Susumu Nagao

過激なトラッシュトークにSNSでの場外乱闘、そして『BreakingDown』の躍進――冬の時代を乗り越えた格闘技界を席巻するムーブメントは、いまやリングやケージの“外”で生まれている。かつて山本“KID”徳郁に勝利し、UFC参戦経験も持つ40歳の金原正徳は、格闘技界の現状に何を思うのか。“格闘技界の裏番長”と呼ばれる男が、『RIZIN LANDMARK 5』での山本空良戦を前にNumber Webの取材に本音で答えた。(全2回の1回目/後編へ)

「新時代を生きるのは大変だと思いますね」

 まだ肌寒い3月半ば、東京郊外の立川にあるリバーサルジム立川ALPHA。自ら運営するこのジムで、昨年11月に不惑を迎えた金原正徳は自虐的な微笑を浮かべながら、いまの時代を生きる難しさを語り始めた。

「時代の流れに合わせなければいけない部分もあるので、オジさんなりに苦労しているんですよ」

「血気盛んなオジさん」金原正徳40歳の経歴

 2003年にMMAデビューしてから、今年でちょうど20年。キャリア10年でベテラン扱いされる格闘技の世界では、もはや大ベテランといっていい。

 実績は申し分ない。2009年12月31日には『Dynamite!!』で山本“KID”徳郁と対戦し、フルマークの判定勝ち。2014年には“格闘技界のメジャーリーグ”であるUFCにも進出。金網に囲まれたオクタゴン(八角形の試合場)に3度上がった。

 2020年に一度は引退を決意するも、翌年復帰。その後は2021年10月24日の芦田崇宏戦から年一度のペースでRIZINに参戦し、連勝中の身だ。4月29日の『RIZIN LANDMARK 5』では、UWF戦士だった山本喧一の息子・山本空良とケージで拳を交わす。本人の言葉をポジティブに拝借するならば、「40歳を過ぎても血気盛んなオジさん」なのだ。

 冒頭で金原が語った「新時代」とは、格闘技の大会中継がテレビ放送からインターネット配信へと様変わりし、SNSによる情報発信が全盛となった現在のことを指す。

 金原は自分がまだ10代だった頃のメディア環境を懐かしそうに振り返る。

「僕らの時代はまだネットで試合映像なんて見られなかった。地上波でやらない試合はレンタルビデオ屋でVHSを借りるか、サムライTV(プロレス&格闘技専門の有料チャンネル)で見るしかなかった」

 2000年代初頭の格闘技メディアは紙媒体が幅を利かせており、ピーク時には『格闘技通信』をはじめ隔週の専門誌が複数刊行されてしのぎを削っていた。金原も「700~800円くらい出して買うこともあれば、お金がないときには立ち読みで情報を得ていました」と語る。

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