Number ExBACK NUMBER
“脱スポ根の少年野球”へ「感情で指導しないでください」監督が保護者と交わした3つの約束「私も長年、怒鳴っていたがそれでは子供が…」
text by
辻正人Masato Tsuji
photograph byKANZEN
posted2023/07/17 17:01
「多賀少年野球クラブ」の監督が考える少年野球の問題点とは?
試合に負けるのは嫌なので、保護者の要望に応えて試合にも勝つチームづくり、楽しく勝つスタイルを追求しました。練習から野球を楽しむ指導に変えて約1年後、2018年夏のマクドナルド・トーナメントで多賀少年野球クラブは初めて頂点に立ちました。さらに、次の年も優勝して連覇を成し遂げました。
「子どもたちにストレスをかけずに勝つ」、「練習時間を短くしても勝つ」といろいろな条件をクリアする方法を考えるのは、自分の限界を超える修行と捉えています。そして、様々な困難を乗り越えてきた自信が、課題に直面しても動じない今の自分につながっていると感じています。
子どもに対して怒鳴ったりするのは止めるべき
野球界には怒声罵声が根強く残っています。しかし、怒っても問題は解決しません。例えば社会人になって、先輩や上司から大きな声で怒鳴られたら、仕事がはかどるようになるでしょうか? 決してはかどらない、逆効果と考えるのであれば、子どもに対して大きい声を出すのは止めるべきです。子どもも大人も同じです。
指導者が選手を怒鳴ったり、暴言を吐いたりする野球のイメージが、競技人口減少の要因の1つに挙げられることもあります。こうした指導をやめられない理由には、指導者の成功体験があると感じています。指導した選手の100人に1人か2人くらいの割合かもしれませんが、厳しく指導して上手くなった選手がいる可能性があります。その成功体験を忘れられないわけです。全ての教え子の育成に失敗したと自覚があれば、指導法を変えるか、指導者を辞めるはずです。もしくは、怒声罵声の環境で育った自分自身を成功例と捉えているのかもしれません。
叱ると怒るは違うと言う人がいますが、受け取る側にとっては一緒です。私たちのチームでは、雰囲気を盛り上げて子どもたちに気分良く練習してもらいたい時だけ、指導者が声を張り上げています。そうは言っても、指導の仕方を大きく変えるのは簡単ではありません。
私も感情のままに言葉を発してしまったり、怒鳴ったりしてしまう指導を長年続けていました。いきなりやめようとしても、最初のうちはイライラする時もあります。そこで大切なのは、言葉を口にする前に一度頭の中で、どんなトーンで伝えるのか、どんな言葉が子どもたちに響くのかを考える習慣です。わずか数秒の間を取るだけでも冷静になれます。
「舐められたくない」という気持ちが
それから、グラウンド以外でも、どんな接し方をしたら相手が喜ぶのかを考えます。