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「保護者のお茶当番はありません」日本一の少年野球クラブが“辞めやすいチーム作り”をするワケ「移籍するとサインが流出する可能性はあるが…」

posted2023/07/17 17:02

 
「保護者のお茶当番はありません」日本一の少年野球クラブが“辞めやすいチーム作り”をするワケ「移籍するとサインが流出する可能性はあるが…」<Number Web> photograph by KANZEN

多賀少年野球クラブが目指す、これからの少年野球クラブの運営とは?

text by

辻正人

辻正人Masato Tsuji

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KANZEN

「野球離れ」が叫ばれる昨今にあって、部員が急増する“楽しい野球”を追求し、大会でも三度の日本一と結果を残している少年野球クラブがある。“怒鳴る指導”や保護者の「お茶当番」など少年野球の問題にも触れた『多賀少年野球クラブ 『脳(ノー)サイン野球』で 子どもの考える力と技術が自然に伸びる! ―楽しさと勝利を両立する育成法』(カンゼン)から一部転載します(全3回の3回目/#1#2も)

〈Q.移籍する選手はいない?〉
〈A.近年はチームを辞める選手、移籍する選手はほとんどいません。ただし、家庭の事情や考え方でチームを離れることもあります。そんな事情も、指導者はしっかりと理解して「辞めやすいチーム作り」をすることも大切です。それが結果として、チームを魅力的にし、選手が「辞めたくない」と思うチーム作りにつながるはずです。〉

序列をつけて2チームに分けることのメリット

 野球の競技人口が激減する中、多賀少年野球クラブは部員が大幅に増えています。選手を厳しく指導していた頃は全学年を合計しても毎年25人前後で、チームを離れる部員も結構いました。チームを辞めていくのは、大半が小学4年生までの子どもたちでした。

 近年はチームを離れていく選手は、ほとんどいません。部員が110人を超えた直近の1年は1人も辞めていません。選手に序列をつけてチームを2つに分け、実戦経験を増やす方針転換が保護者に賛同されていると捉えています。レギュラーを目指すだけではなく、控えでも多賀少年野球クラブで知識や技術を吸収して中学や高校に生かそうと選手や保護者が考えているのだと思います。

 ありがたいことに、練習体験に来た子どもも約9割が入団してくれています。チームを退団して移籍する選手はかなり少ないのですが、2021年、多賀町外から来ていた2人の5年生がチームを離れていきました。理由は2人とも同じでした。5年生になると、自分の今の力がチーム内でどれくらいなのか把握できるようになります。

 当時はトップチームをレギュラー組のAと控え組のBに分けず20人のメンバーで動いていたこともあり、レギュラーと控えで試合経験の差がありました、その2人は平均的な小学5年生よりは十分に能力がありました。ただ、多賀少年野球クラブではレギュラーに入るのが厳しい状況でした。

 保護者も現状を理解しており、小学校最後の1年間はレギュラーでプレーできる地元のチームで野球をさせたいと申し出てきました。決して多賀少年野球クラブが嫌になったわけではないので、チームを離れる時には感謝されました。私は2人が移籍するチームの監督に「これから、うちの選手がお世話になります」と電話して、どんなタイプの選手か、どのような長所を持っているのかを伝えました。うれしいことに、2人は新しいチームでエースになってチームを引っ張りました。

移籍には寂しさはある。それでも…

 もちろん、選手の移籍には寂しさがあります。

【次ページ】 部員を増やすには“辞めやすいチーム作り”が大事

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