濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
KO負けでも“大ウケ”で出世…ドン底のお笑い芸人がBreakingDownで叶えた“人生の敗者復活” 人気出場者ぬりぼう「みんな藁にもすがる思いです」
posted2023/06/28 17:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
朝倉未来が発案、プロデュースしCEOも務めるBreakingDown(ブレイキングダウン)は、格闘技イベントなのだが格闘技での成功がゴールとは限らない。
前CEOのYUGO氏は、ブレイキングダウンがきっかけで世に出て、パティシエとして大成するような人がいてもいいと語っていた。ブレイキングダウンは、あくまで自己実現のきっかけなのだと。
ルールは1分1ラウンド(延長あり)、基本はキックボクシング。もちろん格闘家としてレベルアップし、格闘技界で出世しようとする選手もいる。ただそれ「だけ」でなくてもいいわけだ。
ブレイキングダウンに必要な要素について、朝倉未来は実力派、不良、お笑い枠の3つだと語っている。強い選手の見応えある試合も、不良同士のケンカのような闘いもあり、見ていて笑ってしまうキャラクターがいてもいい。「弱すぎて注目される」ということすらあるのがブレイキングダウンだ。
「これなら俺でもできる」、「あんなヤツ俺でも勝てる」と思わせやすいから、参加希望者も増える。中には「試合に出たいわけじゃなかった」という出場者までいる。筆者にそう語ったのは、ぬりぼう。もともとオーディションに参加できればよかったそうだ。
応募の目的は「バズる」ため
ブレイキングダウンの人気が爆発したきっかけは、YouTubeで配信されるオーディション。一般公募で選ばれた参加者が「ひな壇」の常連選手にケンカを売る。罵詈雑言あり乱闘ありの自己主張合戦で目立つことが、試合が組まれる近道なのだ。オーディションでの“活躍”そのものがネットの話題となり、人気YouTuberとのコラボ動画に誘われることもある。
ぬりぼうも、このオーディションで「バズる」ことを目的にブレイキングダウンに応募した。もともとは吉本興業の芸人だったが泣かず飛ばず。
芸人時代はライブのチケットを自分で売らなくてはいけなかった。原宿の竹下通り、道行く人たちに声をかけたがまったく売れない。顔を近づけて「買わねえよ!」と言ってくる人間もいたし、目の前でチケットを地面に叩きつけられたことも。
YouTuberに転身してもうまくいかない。八方塞がりの時に、話題になっているブレイキングダウンの参加者募集告知を見た。その日が締切になっていた。ブレイキングダウンは書面ではなく動画での応募だ。キックボクシングを1年ほどやった程度(本格的なスパーリングの経験もなし)だったが、急いでシャドーボクシングと自己PR動画を撮って応募した。藁にもすがる思いだった。