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KO負けでも“大ウケ”で出世…ドン底のお笑い芸人がBreakingDownで叶えた“人生の敗者復活” 人気出場者ぬりぼう「みんな藁にもすがる思いです」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2023/06/28 17:00

KO負けでも“大ウケ”で出世…ドン底のお笑い芸人がBreakingDownで叶えた“人生の敗者復活” 人気出場者ぬりぼう「みんな藁にもすがる思いです」<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

“1分間格闘技”BreakingDnwnで人気を博している元芸人のぬりぼう

ぬりぼうが人気者になれた理由

 オーディションでは、やけに堂々としている割には試合に出たくないからビビっているという独自のキャラがウケた。実力を見たいからスパーリングを、と求められてものらりくらり。「昇った太陽、沈まなくなりますよ」という言葉も意味不明だったがインパクトを残した。本当は太陽が沈んで昇らない=ブレイキングダウンに暗黒をもたらすと言いたかったらしいのだが「なんか逆の意味になっちゃってました」。

 ひな壇の常連ファイターに「もうお前はこっち来い。ひな壇クオリティだよ」と苦笑されつつ臨んだスパーリングはKO負け。相手から逃げ回ったあげくに転んで頭を打った。そして自ら「救急車呼んでください」。強さが基準の格闘技イベントなら話にならない。

 でもブレイキングダウンはそうではないから、ぬりぼうは人気者になった。試合も組まれた。

 初戦は判定勝ち。2戦目は判定負け。どちらも対戦相手は芸人で、だからこそ負けると悔しかった。未来からも「方向性を考えたほうがいい」と言われた。必ずしも強い必要はないブレイキングダウンだが、といって“お笑い”だけで生き残っていけるわけでもない。変化なり成長なりの“人間ドラマ”を見せることが重視される。

 ぬりぼうは朝倉未来・海兄弟が所属するジム、トライフォース赤坂に入門。未来に誘われてプロ選手の練習にも参加することになった。

「とにかく生き残らなくちゃいけないので。たまに“やろう”って言われてスパーリングしてます。いやもうボコボコですよ(笑)。何もできなくて涙が出てくるけど、カメラがないところでは泣きたくないんでトイレで泣いてますね」

「清水さん、お薬やめれたの?」挑発で乱闘に

 5月21日、『ブレイキングダウン8』での3戦目は清水良太郎との対戦だった。清水はモノマネタレント清水アキラの息子で、自身も元モノマネタレントだった。覚醒剤取締法違反で逮捕され、父との関係も悪くなった。今回のブレイキングダウン出場は、もちろん格闘家としてのし上がろうという意図ではない。ぬりぼうと同じ“人生の敗者復活”をかけてのものだ。曰く「もう一度、親子共演がしたい」。

 この大会のオーディション、ぬりぼうはひな壇に。ファン投票で4位に選出されていた。清水に対戦指名されると「モノマネ対決しましょうよ」とアドリブでモノマネを披露。清水が格闘技経験なしと聞いて試合を受諾した。だが清水は学生時代ケンカでならしたという話もあり、その時点で「負けると思いました。背も高いし」とぬりぼう。

 会見では白い粉の小袋を持参して「清水さん、お薬やめれたの?」と挑発、乱闘に。転倒して「痛っ!」と悲鳴をあげるところまで含めてぬりぼうらしかった。しかし試合では、思いもよらぬ展開が待っていた。

【次ページ】 ハチャメチャなKO勝利

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