ハチャメチャなKO勝利

　開始直後、ぬりぼうがパンチでダウンを奪う。そこからすぐに清水が倒し、立ち上がったぬりぼうのパンチでまた清水がダウン。清水は目を直撃されたのか顔をしかめて沈んだ。わずか1分の間に2人で計3つのダウン。スリリングな、と同時にハチャメチャなKO勝利だった。インパクトということでいえば、それはもう絶大だ。

試合は1分間で両者がダウンを奪うスリリングな展開に　©Norihiro Hashimoto

　朝倉未来推薦でYouTubeのビジネスリアリティショーに出演。プレゼンにも成功している。また未来のインフルエンサー事務所にも所属。大逆転の人生としか言いようがない。

　試合会場で流れるVTRの撮影で、かつてチケット売りをした竹下通りに行くと、人に囲まれて身動きできなくなった。

「昔はウーバーイーツのバイトして、1日の収入が800円なのに飲みに行こうとしたり、合コンで女の子全員にドタキャンされて男3人でチーズフォンデュ食べたり。売れない芸人ってどんだけモテないんだよと思いましたけどね。でも芸人時代の自分に言いたいですよ。頑張ってれば報われるぞって」

清水から2度目のダウンを奪い、ぬりぼうがKO勝ちを収めた　©Norihiro Hashimoto

「僕だけじゃなく、みんな必死だし藁にもすがる思い」

　試合直後にあらためてインタビュー。「KOってこんな気持ちいいんですか」と言いながら、ぬりぼうは試合に向けての裏事情も語った。

「実は5月に入ってから1回しか練習できなくて」

　それくらい多忙だったらしい。しかし試合に向けての追い込みをするべき期間に練習1回とは。“最初は試合をするつもりもなかった元芸人が猛練習で強くなった”という、分かりやすく美しいドラマからは完全に脱線していたわけだ。それもまた“さすが”という気がする。

「今日の試合、よかったですか。大丈夫ですかね。ハードル上がっちゃいました？ どうしましょうか、次。むしろ派手にKO負けしたほうがいいのかな」

　完全に余計な心配をしていたぬりぼうだが、とにかくこのブレイキングダウンという戦場で生き残ることに必死なのは間違いない。前回大会で勝利した選手がオーディションに参加できないこともある。『ブレイキングダウン8』では、お笑い枠で最高の人気者だった「10人ニキ」の試合も組まれなかった。

「僕だけじゃなく、みんな必死だし藁にもすがる思いですよね。今回は“芸人枠を取られるかも”という危機感があって。負けたら僕はいらなくなるのかなって。“ひな壇は絶対譲らない”って気持ちでしたね」

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