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髙橋藍なぜ試合前に“ハグ”を? 仲間たちが「祐希さんに似てきた」と証言…サーブやレシーブだけじゃない21歳の“劇的な進化”のヒミツ
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byAFLO SPORT
posted2023/06/20 11:04
プレーだけでなく、振る舞いにも頼もしさを感じさせるバレーボール日本代表の髙橋藍(21歳)
6月6日に開幕した名古屋でのネーションズリーグでは、有言実行とばかりに何度も魅せた。これまでも定評のあった守備力は初戦のイラン戦から発揮され、髙橋のレシーブから始まる連続得点で最高のスタートを演出。そして、ノータッチエースも記録したサーブもさることながら、進化と成長を強く印象付けたのは攻撃面だ。
まず、試合前の公式練習で放つ1本目のスパイクから違った。
会場は平日の19時40分開始というスケジュールにもかかわらず超満員。大観衆にアピールしたければ、アタックラインにドカンと叩きつければいい。
だが、髙橋はその1本も“試合に通ずるスパイク”とばかりに、コートの奥やエンドライン付近を狙う。しかも確実に。打ちたい場所へ打つのではなく、試合になればそびえ立つ相手ブロックを想定して通過点を確認しながら打つ。
その成果はもちろん試合の中でも随所に発揮された。体勢が悪い状況で、しかも相手の2枚ブロックが並んでいても、ブロックアウトを狙ってポイントを獲る。どの高さ、角度、タイミングでスパイクを放てばレシーバーのいないコースへ叩きつけられるかを熟考し、確実に射止める。
そんな頼もしい変化を最も近い位置で感じていたのは、トスを託すセッターの関田誠大だ。
「(髙橋は)もともとは相手のブロックが完成する前に打ちたい、そういうタイプなんじゃないかな、と。でも今は、ブロックが来るのを待って逆方向に打つとか、こっちに打つよ、というフォームで見せておきながら、外して抜く。単純に抜くだけではなく、相手をだまして、駆け引きして打つ。藍と石川は、そういうことができる選手です」
イタリア移籍を決断した理由
もともと高いテクニックはあるが「世界と渡り合うべく極めたい」。まさにそれこそが、髙橋がイタリアでプレーすることを求めた理由だった。
世界最高峰であるイタリアでは瞬きする間に強烈なジャンプサーブやスパイクが飛んでくる。パワーと高さが圧倒的で「ああいうボールを受けられるだけで練習になる」と手ごたえを掴んだ。そして、さらに自分が求めているものは何か。髙橋の言葉は、明確だった。
「日本では自分の工夫次第で決められるスパイクも、圧倒的な高さの前ではもっと工夫しないといけないし、考えて打たないと決まらない。そのための技術も必要だし、高く跳ぶためのジャンプ力、身体の強さや筋力自体も必要です。コースを打ち分けるのは当たり前だし、長いコースを狙ったり、ラインへ打ったり。ブロックがいる中でどう打つか、というのが大前提だし、そこで決めるための引き出しを増やしたい。その感覚は、イタリアに来なかったらわからなかったものだと思います」